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side鶴丸国永
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想像するだけで胸の内が冷えるのがわかる。
一期が消えて、存在の証は何も残らないのに、ただただ自分の身に残る一期を抱いたぬくもりの感触。
それだけを必死に忘れぬよう、繋ぎとめるのだろうか。
いや・・・。
「そうなったら、俺も消えるよ。もう君の居ない世界は考えられないからなぁ」
「え・・・?」
「昨日あんな辛い目に合わせておいて、こんな事言えた義理じゃないんだが・・・一期の事が好きだよ」
一期の反応は見ずに、言葉を続けていく。
「朝になると一期が居ないのがどうにも寂しくて、弟達ばかりに構うのが悔しくてな?我侭だろう?なんて身勝手なんだろうと自分でも嫌になるよ。最初は適当に可愛がってやって、笑えばそれでいいと思ってただけなんだけどな、いつの間にかこんなに好きだ」
「身勝手ですな・・・本当に」
低く響く一期の声。
「悪い」
この懺悔みたいな告白も実に身勝手だと分かってる。
けれど、一期が消えてしまう可能性を現実に見てしまって、もう胸の内に仕舞い続けることは出来なかった。
拒絶されてもいい。
昨日の行為を詰られて、責められてもいい。
それでも伝えないまま終わってしまうよりマシだ。
「でも・・・私はその身勝手が嬉しい」
驚いて一期を見ると、ポロポロと涙を零している姿があった。
慌てて駆け寄ると、腕を伸ばされ、反射的に身体を滑らせ抱き締めた。
そのまま勢いに任せ、襖を越え一期は自室に転がりこむように入ってきた。
夢、だろうか。
自分の胸の中に一期の体温がある。消えていないぬくもり。
ゆっくりと一期の身体に腕を回すと、一期はにっこりと微笑んだ。
「私も、鶴丸殿が居ない世界はもう考えられません。想像しただけで絶望してしまいます」
俺の胸の中で、一期は話し始める。その瞳にはまだ涙が溢れていて、瞬きの度に頬を濡らしていた。
「部隊が離れてから、ずっと寂しくて。昨夜も辛くされて。今日重傷を負った時に、もう消えてもいいか、と思ったのは確かです」
「・・・・・・・・」
「でも、部屋に鶴丸殿が来てくださって、姿を見たらやっはり消えたくないと。叶わない思いでも傍に居られなくても、私は貴方と同じ世界に居たいと・・・思ってしまいました」
自分の身体を抱き締めていた腕に少し力が込められたのを感じて、俺も慌てて抱き締めなおす。
それを拒まれないのが何より嬉しかった。
「もし先ほど仰って頂いた通り貴方も私に同じ思いを抱いて下さっていたなら、今日は本当に計り知れない心配をかけてしまいました・・・」
泣いているせいか、一期の語尾は震えていた。
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