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蜂蜜と首輪 黒月⑴
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「さよなら」
ぐっと胸ぐらを掴んで乱暴にキスをした
僕より背が高い
僕より体格がいい
全部、全部、苛々した
「ちょ、っと!蛍!」
追いかけてくるのを無視して進む
悔しくて涙が出そうになるのを必死に抑える
あの時の会いたい、は嘘なのか
キスしてくれたのも、抱きしめてくれたのも、笑いかけてくれたのも、全部嘘なのか
バカみたい
「蛍!…ちょっと待てって!なに今の」
「そのままの意味です。もう会うこともないでしょうね」
パッと手を握られた
久しぶりに触られたなあ
なんて思ってたら抱きしめられた
「…待ってってば」
答えられない
ゾクゾクする
あぁ、好きだ
この声、この感じ
「俺のこと嫌い?」
「…」
「答えられない?」
「…」
「会いたかった」
「…なにを今さら……」
苛々する
僕ばっかりだ
「言いましたよね、もう会わないって」
「だから、なに」
「嫌いです。会いたくないです」
「…嘘だ」
苛立ちが増す
分かってるならどうにかしてくれ
僕の気持ちが分かってるのなら、とっとと捕まえててくれ
僕は不安で今にも手を離しそうなんだ
後ろから抱きしめられた手をそっと解いて向き合う
「嘘だと思うなら、僕の手を離さないでください。会えない分、不安でおかしくなりそうなのにそれに気づかないんですか。それなのにまだ好きだなんて言うんですか」
「…」
「あんた、どんだけ勝手なんですか」
目を見てそう言ったら彼は俯いてしまった
「さよなら」
そうもう一度言い放って踵を返した
「…好き、だから…!」
ビリビリと鼓膜が痺れる
離れるつもりだったのになあ
そういうことを言われると、どうも離れられない
「待ってろ。迎えに行く」
そう言われて立ち止まる
ちょっと違和感を覚えて振り返って近づく
「…今じゃないんですか」
「は?」
「ったく…なんで待ってなきゃいけないんですか。僕は離すなって言ってるんです」
ちょうど、手を伸ばして届く距離
その距離がもどかしい
だけど僕から手を伸ばすことはない
…無理か
彼から手を伸ばしてくることはないだろう、と視線を落としたら頬に手を添えられた
ビクッとして顔を上げたら目が合った
「…行くなよ」
瞳の奥がゆらゆらと揺れて、声のトーンもひとつ下がっていた
きっと何をしても逃げられない
僕はこの人が好きなんだ
この声を聞くたび胸がしめつけられる
「好きだから、離れようとすんなよ。離さねえから」
僕が無言なのを了承と受け取ったのか、そのまま触れるだけのキスをされた
初めてキスしたときみたいに胸いっぱいに甘酸っぱい香りが広がった
fin.
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