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sideアキ: おあいこ
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コンコン
「どうぞっ、」
ガチャッ
「こんにちはアキ!」
「ぁ、み、みんな!学校お疲れ様っ。」
この日訪ねてくれたのはイロハ・カズマ・佐古だった
「体調はどうだ?」
「もう平気、有難うカズマ…」
「そうか、良かった。」
イロハとカズマは用意してた椅子に座り、佐古は窓際の方へ歩いて行く
「…? アキ、寒いの?」
「ぇ、あ、これ? うんちょっとね…トウコさんが貸してくれて……」
「そかそか。まだ冷えるしちゃんとあったかくね。」
「うんっ、そうする。」
(いや寒くはないけどな。)
首元にはびっしりキスマークが付いてた
(確かに俺が「もっと付けて?」って言った記憶はある。)
でもさ、ちょっとこれはやり過ぎだろ……
トウコさんにも苦笑されるレベルに笑えないくらい付いて
て、恥ずかしい
「会長とハルは今日は来ないって。ハル何か怒ってたよ。」
「怒ってたな。何かこう…笑ってるけど怒ってる的な…」
「あ…はは、そうなんだっ、」
(知ってるそれ。)
俺の事でそうなってんだよね確か
けっ、いい気味だし。ハル怒らせたら凄い怖いんだから、どんどん怒られとけばいいんだ!
って、思うんだけど……
(ここにハルがいないのは、やだな…)
正直、まだイロハたちと気まずい
1人だとどうしても緊張してしまって、何を話せばいいか分からなくなる
(っ、どうしよ……、)
俺がハルとして接してた事、本当に怒ってないのかな。
嘘ついてた事とかイロハたちと友だちになった事も、どう思ってるの?
また…今度は〝俺〟とも、仲良くしてくれる……?
(なんて、無理かな…っ、)
会話が止まって、シィ……ンと部屋が静まりかえる
何か話さなきゃと思うけど、でも頭には何も浮かばなくて
「……ねぇ、アキ。」
ビクッ
「ぁ、な、何?」
「あのね、怯えなくていいよ?」
「ぇ、ーーーっ、」
ふわりと、知ってる体温に抱きしめられた
「イロハ…?」
「アキ。おれたちがアキの事〝アキ〟って呼ぶの、まだ怖い?」
「っ、」
「カズマたちと話し合ったんだ。もう一回自己紹介からするのもありだよねって。
でも、それだと〝ハル〟として過ごして来たアキを否定しちゃうような気がして…だけど、このままでもやっぱり怖いよね。」
体を離されて、真っ直ぐ視線を合わせられる
「アキ。 おれたちはハルの友だち。
でも、〝アキの友だち〟でもあるよ?」
「ぇ、?」
「クスクスッ、初めて会った日にちゃんと言ったでしょ?〝友だちになろう〟って。」
「っ、でも、」
「〝あの時の俺はハルだったから〟って?
うーん。それはそうなんだけど…でも違うんだよねぇ。」
「アキがハルと入れ替わった日、俺たちはちゃんとアキに気づいたんだ。」
「顔もまったく一緒で、性格だって変わらなくて…それなのにどこかおかしいなって思って……でも、この違和感をどうすればいいのか分からなくて…」
「そんな時、ハルに生徒会室へ呼ばれたんだ。そこで全てを聞かされた。」
「その時ね、おれたち安心したんだ。」
「あん…しん……、?」
「そう。〝あぁ、おれたちは合ってたんだ〟って。」
「ーーーっ、」
「なぁアキ。俺たちは、いつもあんなに近くにいたのに全然お前のことを見ていなかったんだな。」
「ごめんね。今まで、苦しかったね。」
「ちが、俺の方こそ…っ、」
「あの時……後夜祭前に2人で噴水で話した時も、おれアキに凄い酷いこと言っちゃったよね。
何に悩んでたのか、何であんな苦しそうに泣いてたのか、何にもわかってなかった。それなのにおれ、アドバイスなんかしちゃって…っ、」
「っ、イロハ、!」
(違う、違うんだ、)
「俺、あのアドバイス凄く嬉しかったよ? あの時のお陰で後夜祭は本当に幸せだったんだ。それに、今こうして俺は幸せで……
だから、もう本当にいいんだ。」
「アキ…」
「それに、俺だってたくさん嘘ついた。それこそ、もうずっとずっと…本当にごめんなさい。」
「それはいいの!仕方のないことだったと思うよっ。」
「んーん、仕方ないなんて言葉で逃げちゃ駄目だ。」
本当に、2人は優しい。
「なぁ、もう〝おあいこ〟にしないか?」
「おあいこ、?」
「あぁ。アキも嘘を付いていて、それを自分で許せないでいる。俺たちも気づけなかった自分たちが許せないでる。
それなら、もうおあいこにして先に進まないか?」
「アキさえ良ければそうできればなって…思ったんだけど……」
どうかな?
(っ、そんなの、)
「俺からも、お願いしたいくらいっ、」
2人のこと、本当に大好きなんだ。
ずっとずっと一緒にいて欲しいくらいに
「これからも、2人の友だちでいて…いい?」
「勿論!」
「俺たちも、これからも〝アキ〟って呼んでいいか?」
「っ、勿論!」
「ふふふ。じゃぁ、もうこれはおあいこねっ。」
「アキ。学校でお前が帰ってくるの、待ってるから。」
「タイラちゃんも待ってるからね!!」
「ーーーっ、ありがと、」
胸がキュゥッとなって、安心して涙が出そうになる
(本当に、優しいや。)
ハルとも友だちになってくれて、有難う。
「さっ、おれたちの話はこれでいいかな?」
「先に先生の車へ帰るか。」
「え、もう帰っちゃうの?」
「うんうん、何か佐古くんがアキと2人で話したいって。」
「次はまたゆっくり来るから。」
「2人で…うん、分かった。」
「大丈夫、そんな緊張しなくてもいいと思うぞ。」
「佐古くーん!話終わったからこっちおいでー!!」
窓辺に立ってた佐古を呼んで、「じゃぁまたね!」と2人は去っていったーーー
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