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side丸雛家月森: 罪 1
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(そう、これはーーー)
紛れもなく、私の……月森の犯した、罪だ。
「ど、いうこと…?」
「イロハが女って……なに………、」
呆然とする小鳥遊のお2人に、カズマ様が寄り添った
「カズマは、知ってたの…?」
「家が隣だし幼い頃からずっと一緒にいるしな。どうしてそうなったのかまでは何となくは察してる。だが、確実な理由は俺たちも踏み込んで聞けていなくてな…」
「お話致します。全てを……」
(ここまで事を放置し大きくしてしまったのは私の責任。)
そして、それに収拾が付かず月森としての掟を破って自ら動き…こうして助けを求めていることも。
(私は、月森の恥だな。)
大婆様はあんなにも私を気にかけてくださっていたのに、結局私は丸雛を救うことはできなかった。
(全ての事が終わったら、辞めよう。)
私が報告せずとも、このことは直ぐに大婆様の元へ伝わるだろう
そうなれば、破門か…絶縁か……
(もう、いい。)
私のことなど、もうどうでもいい。
それよりも…社長とイロハ様の事をどうにかしたい
ただ、お2人の心からの笑顔が…見たいーーー。
「私と、社長であるイロハ様の母…ミサコ様の出会いは、幼稚園でした。」
当時、月森としての教育を受けながら通っていた幼稚園
そこで1番仲良くなったのがミサコ様だった
何をするにもいつも一緒で、先生にも同じ教室のみんなにも〝仲がいい2人〟という括りで見られていた
「いくら幼いと言えど月森は月森。同い年くらいの子たちよりは遥かに出来ることがありました。」
かけっこも、縄跳びも、跳び箱も、マット運動も
手先の器用さから書ける文字の多さ・綺麗さだって、全てにおいて私は頭ひとつ出ていた
そんな私をみんなとても褒めてくれたが、中でもミサコ様はそんな私と一緒に喜んでくださって
『スズちゃんすごいねっ!なんでもできるの?いいなぁーわたしにも教えて?』
『いいよっ!』
本当に仲が良くて…いつも一緒で……
『ねぇ、スズちゃんは〝つきもり〟っていうんでしょう?』
ある日の夕方
家からの迎えを待ちながら2人で砂場で遊んでいた時に、ふと問いかけられた
『うんっ、そうだよ!』
『つきもりっていうのは、しゃちょーさんとかといつもいっしょにいるっておかあさまがおしえてくれたっ。』
『そうだよミーちゃんっ。だから、わたしもじぶんの〝あるじ〟をみつけなきゃいけないの。』
『…スズちゃん、どこかにいっちゃうの……?』
『えっ、』
パッと前を向くと、目に大粒の涙を浮かべたミサコ様がいた
『もうわたしとはあそばない?ほかのこのとこいくの?』
『まだいかないよっ!わたしあるじいないもん。』
『ほんとに…?』
『うんっ!』
〝主人と出会ったら、ちゃんとわかるよ〟と大婆様が教えてくださった。〝大切なことだからね〟と。
〝だから、今はゆっくり育ちなさい〟と。
(だから、ゆっくりでだいじょうぶ。)
それまではミーちゃんや他のみんなと思いっきり遊んでーーー
『それなら、わたしをあるじにするのはっ?』
『……えっ、?』
びっくりする私に「名案だ!」というようにミサコ様がグイッと近寄る
『わたしがスズちゃんのあるじになればいいじゃないっ!そしたらずっといっしょにいれるよ!だめ、かなぁ…?』
『ミーちゃんが、わたしのあるじ……?』
『うんっ。
だってわたし、おおきくなったらまるひなのしゃちょーさんになるよ?』
確かに、それは家でも教えられていた
〝貴女がいつも一緒に遊んでいるあの子は、丸雛のたまごなのよ〟って。
(でも、そんなにかんたんにあるじってきめてもいいのかな…)
『ねぇ、すずちゃん、だめかなぁ……?わたしはスズちゃんとずっといっしょにいたいよっ。』
『わたしだって、ミーちゃんとずっといっしょにいたいっ!』
だってミーちゃんは私の1番仲良し
お話するのも楽しいし、一緒に遊ぶのも楽しいし、何をするにもいつも一緒で
(なのに、はなればなれになるなんて…そんなのかんがえられない……っ、)
それくらい、ミーちゃんは私にとって〝大切〟な人でーーー
(…………あれ?)
〝大切〟
(たい…せつ……)
〝主人と出会ったら、ちゃんとわかるよ。
ーーー大切なことだからね。〟
(ミーちゃんは、)
ミーちゃんは、わたしにとっての〝大切〟。
(……あぁ、そっか。)
『ね、ミーちゃん。』
『? なぁに?』
『わたし、ミーちゃんのつきもりに、なるよ。』
『えっ、?』
びっくりするミーちゃんに、ニコリと微笑んだ
(大切って、きっとこういうことなんだ。)
私にとっての主人は、きっとミーちゃん。
その考えに至った瞬間、私の中でストンッと何かが心に落ちてきてカチリと隙間に埋まった
(あぁ、こんなかんじなのかなぁ?)
自分の主人を見つけた瞬間と言うのは、心の隙間にそれと同じ形のピースがピタリと挟まるような…そんな感覚なのだろうか。
嬉しさのあまり『うわーん!』と泣き出してしまったミーちゃんの涙を優しく拭ってあげながら、これからこの人は私が守っていくんだなと実感した
そして、その日同じ時刻に迎えにきた双方の両親へこの事を伝え
大婆様からも許可を貰い
私は、齢4歳にして晴れて丸雛の月森となったーーー
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