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「志望校?」
新生徒会として発足して、早3ヶ月
行事を司るということもあり入学式にレクリエーションにと早速目まぐるしく追われた
今は体育大会に向けての準備で、放課後皆んなで残り仕事をしている
「そうそう、あれ?A組ってまだ話しされてないの?僕ら受験生なんだし、そろそろ進路考えなきゃねー」
〝進路〟
(そうか、3年生ってそういうのあるんだっけ。)
中学から高校はエスカレーター式だったし受験なんて小学生が最後
もう高校生の期間も終わるのか。
「会長は進学でしょ?」
「まぁそうだな。」
「4年大?」
「あぁ。まだどこ行くか決めてねぇが取り敢えず4年大が希望。まだ社会に出る気はねぇしこれから進む道見つけていく。お前は会計?」
「僕は専門学校ー!4年大行ってもいいけど早く現場出たいからね!家が動物病院だしーー」
「そうか。似合ってんな動物と触れ合うの。」
「本当に!?昔から好きなんだよねーだから早く資格とって働きたい!! 副会長はなにするの?」
「ぇ、」
「櫻の会社継ぐ為に進学?それとも、別になりたいものあるの?」
「私は……」
わたし、は
「嫁ぐ、ですかね?」
「………へ、嫁ぐ??」
「えぇ。」
〝高校を卒業したら、婚約者の元へ嫁ぐ〟
前々から決まっていることだし、向こうにも「早く来い」と言われている
(せめて高校卒業してからと話をしているし、卒業式が終わったらすぐ行くことになるのだろうな。)
「ゎ、わぁそっかー副会長って婚約してるんだっけ?
もう結婚もするの??」
「そうなるでしょうね。」
「本当に!?うわーめでたいね!早いなぁ……!!
あ、結婚式とか呼んで欲しいなーねぇ会ちょu」
ダンッ!!
口を閉ざした梅谷が、いきなり机を強く叩いた
「……ぇ、会長? ちょっとどうしt」
「黙ってろ。
ーーーおい、櫻。」
「………何か。」
そのまま歩いてきて、ピタリと目の前で止まる
「お前、本当に嫁ぐのか?進学も就職もせずに?いいのか?」
「えぇ、その予定ですので。」
「違ぇだろうが!!」
「っ、」
ガシッ!と両肩を掴まれ、顔を近づけられる
見上げた梅谷の顔は……何故か、苦しそうに歪んでいた
「予定じゃ…ねぇだろ……何の予定だそれ。お前の将来の予定か?誰が決めやがったんなもん。
ーーーそれは、てめぇ自身が決めることだろうが。」
「っ、本当うるさいですね……私には婚約者がいて、高校卒業後に向こうの家へ入るのはもう前々から決まっていたことなんです。あなた方とは違うでしょう!?」
「何にも違わねぇよ!!婚約者がいようがいまいが関係ねぇ!ってか本当に心が通じ合ってたら互いに配慮するもんだ。だって…お前まだ18だぞ?」
「この世界のことご存知で?何甘ったれたこと言ってるんです? 婚約なんてたかが会社同士の政でしょうが。そこに愛も何も要らないでしょう。」
「……なら、どうしてお前は『そうなるでしょうね』なんて言いやがんだよ。」
「…………ぇ?」
「確かに婚約なんざ会社同士の提携だなんだのついでだ。そういう風に子どもを使うのが当たり前の世界だ。
だがな、それにちゃんと納得してんなら『そうなるでしょうね』とは普通言わねぇだろ。『そうします』とか、もっと明確な言葉が出てくるはずだ。
何受け身になってんだ、てめぇ。」
「ーーーっ、」
ビクリと体が震えて、視線が下がる
「おい、下向くんじゃねぇ。」
「っ! ぁ……」
反射的に顔を上げると、ふわりと大きな手に片頬を包まれた
「お前は、いつまでそう流されてんだ? なんで自ら動こうとしない。
ーーー納得いってねぇなら足掻けよ、櫻。」
「ーーーーーっ、そんな、わけじゃ、」
受け身とか、別に納得いってないとかじゃなくて、
ただ、私は
「何か力が必要なら俺が貸す。ってか少なくとも生徒会のメンバーは味方だ、お前が腹落ちするまでもがくんなら手伝う。あ、別にこれは下心とかじゃねぇぞ?お前の未来を思っての話だから。
だから、さ? 教えろよ櫻。
お前は、どうしたいんだ……?」
「ぁ………っ、わ…た、しはーーー」
Prrrrrrrrrrrr!!
ビクッ
(嗚呼、この音…は……)
固まっていた喉に息が通り、真っ白だった頭が一気に鮮明になっていく
「離してください、梅谷。」
「っ、」
渾身の力を振り絞ってバッと手を払い、荷物をまとめる
「ぇ、え、副会長帰るの……?」
「えぇ、私の仕事はあらかた終わっていますし後は明日でも大丈夫です。今日はお先に失礼しますね。」
「そんな、ちょっと待っ」
「ーーー待てよ櫻。」
会計の言葉を遮り、低い声が歩き出す私の肩を掴んだ
「まだ話は終わってねぇだろ。」
「終わっています。」
「っ!だから、」
この着信音は、早く行かないといけないものなのに。
遅くなったら…その分 長くなってしまうのに。
無理やり振り向かされた先の梅谷の目は、どこまでも真っ直ぐでーーー
(嗚呼、本当……っ、)
「貴方と私では、住む世界が違うんです!!」
「っ、」
眩しくて眩しくて、悔しくて、涙が出そうになる。
私の表情に息を飲んだ身体を、ドンッと強く押した
「もうこれ以上、私のことに首を突っ込まないで下さい。」
これ以上、私の頭を掻き回すな。
脳がグルグルして心がグチャグチャになって……口から、全てが漏れてしまいそう
シィ…ンとなってしまった空気の中
足早に「では、失礼します。」と扉を閉めた
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