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「……はい。実は……。
父が、倒れたんです。過労なら転校まではしなかったのですが。
………………………………がん、なんです。
しかもいろんな所に転移していて、手の施しようがないと。
おじいちゃんもおばあちゃんも最後まで一緒にいることを希望したので、両親の地元の病院へ移すんです。僕も、父と最後まで一緒にいることを希望しました。」
「そう、だったのか。」
「はい。」
(そうか。そんな大きなことを一人で抱えていたのか。)
「テツヤ、こっちへ戻ってくるのか?」
「あっちへ行ってそのまま生活をするので、おそらく無理です。」
「……そう、か。」
「もう、いいですか?」
はっとした。テツヤの声が震えていたのだ。
気づかなかった。今まで、堪えていたのか。
だが、このままでいいのか?
想いを伝えずに、このまま終わってしまっていいのか?
「テツヤ!待ってくれ!!僕は、テツヤに言わなければ行かないことがあるんだ!」
出入り口に向かっていたテツヤの足が止まった。
「テツヤ!僕は、……僕は君のことが!!!!」
「赤司くん!!!!!!!」
初めてだった。テツヤがこんな大きな声を出すのを聞いたのは。
「赤司くん。ダメです。……ダメなんです!!」
やはり、迷惑だったか。
「ボソッ」
「?」
「5年後、また、ここの屋上にきてくれませんか?」
「!?……ああ、わかったよテツヤ。」
「それじゃあ、また、会いましょうね。ここで。」
「ああ。」
そうしてテツヤは転校した。
だが、悲しいという気持ちはもうない。
なぜなら、5年後にまた、会うのだから。
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