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「京佑は彼女のこと、好き?」
「…好きだよ」
嫌いではない。
けれど好きだという感情も沸いたことはなかった。
上司に紹介され、あっという間に結婚という話になっていた。
どんだけうっかり野郎なんだと自嘲する。
「…ちょっと間があった」
「っ!ねぇよ!!」
「別にあんな女、好きなわけじゃないだろ!?」
「好きじゃなきゃ結婚しねぇよ!」
「うそだ!!会社の上司に勧められて仕方なくだろ!断るに断れなくなってここまで来たって感じじゃないのか!?」
な、なんだよ…。
全部、知ってる風に言いやがって。
「好きじゃないのに結婚なんて相手に失礼だと思わないのか!?」
うるさい!!
そんなこと言われなくてもわかってるよ!!
言葉にしたくても出てこなかった。
なんだか悔しくて…。
「…断ったら会社にいられないとか…?」
「っ!」
ほんとにこいつ…。
知ってて言ってんのか?
びっくりしすぎて伊吹を見上げた顔は変になってたと思う。
「なんでわかる?って顔してる」
「…人の心を読むなよ」
伊吹は笑顔を見せた。
あの頃のままの笑顔だ。
「わかるよ。俺の家もそんなようなもんだったし」
…そうか。
伊吹の実家は有名な企業だもんな。
「まぁ、もし辞めさせられたら俺のとこに来ればいいよ」
「…は?」
俺のとこにくればいいって…。
「智樹から聞いてないか?家、出て起業したの。ほんとはお前とずっと一緒にいるために作ったんだけど逃げられたからな」
俺の…ため?
まさか…。
「嘘じゃねぇよ。あれから俺には京佑しか見えてない」
再び、伊吹は俺を抱き締めた。
…安心する。
こんなに安心するのは久しぶりかもしれない。
抱き締めかえそうとしたがぐっと思い留まった。
…なに、この雰囲気に酔ってんだ…。
「…無理だっつーの…」
ようやっと絞り出した言葉。
「うん。わかってる。…でも諦めねぇから」
そう言うとパッと腕を離し、さっきまでの雰囲気とは違ってけろっとしていた。
でも俺の心臓はバクバクしてて、落ち着くまで多少の時間を要した。
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