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「伊吹?おまえ、こんな時間に一人でなにしてんだ?」
俺はそのまま、やり場のない気持ちをどうすることも出来ず、一人、バーで酒をあおっていた。
すると知った声が聞こえてきた。
「……」
「なにを腐ってんだよ」
そいつは俺の隣に腰かけると嫌な笑顔を俺に向けた。
「京佑だろ?」
「…お前、なんか知ってたのか?」
お前がさっさと俺に京佑の情報を教えてくれていたら京佑を逃がさなかったのに。
俺は黒田智樹を恨めしそうに睨み付けた。
「随分と落ちてるな」
「…当たり前だろ。もう少しだったんだよ。もう少しで京佑を手に出来たのに」
「それはお前の思い過ごしだろ?現にいなくなってんじゃんよ」
「っ…」
「京佑がどこにいったのか聞かないのか?」
「…もういいよ。あいつは結婚するんだ。俺の出る幕はもうない」
もうヤケだった。
そりゃ会いたいさ。
でもあいつにその気がないし、結婚するのに奪うつもりもない。
「ふーん…。お前の気持ちはそんなもんか。それならもう忘れたほうがいいな。あいつもその方が幸せかもな」
ガタッ!!
「お前になにがわかるんだよ!昔から俺には京佑だけだった。そりゃ…顔向け出来ないこともしたけど…今は誓ってあいつだけだし、京佑も…」
「ふっ…」
捲し立てるように智樹に詰め寄った。
すると智樹から笑いが漏れた。
「お前のそんな顔は初めて見るな。あ、違うか。昔、京佑が逃げた時もそんな顔だったか」
なにが言いたい。
キッ!っと睨み付けた。
「ほら」
智樹は動じることなく一枚の紙を差し出した。
「?」
「お前の知りたかった住所だろ?」
まさか…。
吃驚しすぎて、言葉が出てこない。
「最後の足掻き、してみれば?」
それを鷲掴み、店を大急ぎで出た。
あ、礼をいい忘れた。
でもそれより京佑だ。
もう深夜の二時を回っていた。
けれど迷惑なんておかまいなしで俺はタクシーに乗り込み、目的の場所へと向かった。
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