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【光謙】雨降る告白
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突然降り出した雨に体温が奪われていく
****
部活が終わり、いつも通り財前は謙也は二人で帰り道を歩く
財前はこの時間が何よりも幸せだった
財前は謙也に密かに思いを寄せていた
謙也も男で財前も男…
この気持ちを謙也に伝えてしまったら、謙也は一体どんな反応するだろうか…
拒絶するかもしれない
ただ困らせるだけかもしれない
財前は思った。大好きなこの人を、困らせたり、苦しめたりは絶対にしたくない。と
だから心の奥底へ、その持ってはいけない感情をしまい込んだ
このままこの感情を殺せたらどんなにいいだろうか
無かったことにできたのなら…
それでも財前は謙也の近くにいたかった
恋人という関係じゃなくても、ただ近くにいたかった
謙也はどんな人とも仲良くなれる
謙也を嫌う人なんてそうはいない
だから、謙也の周りにはいつも誰かがいる
誰にだって、公平に分け隔たりなく接する謙也の中で、きっと自分も、その中の一人でしかないのだろう
謙也の中で特別なのは、きっとただ一人である
親友の白石蔵ノ介
きっとこの人だけなんだ
この人の特別でありたい
この人の傍にいたい
ただそれだけで…
「…ぜん…ざーいぜんー!!!!」
「うわっ!いきなり大きな声出すな!びっくりするやろうが!」
「ちょっ、なんやその口の利き方わ!一応、俺は先輩やねんぞ!
それに、何度も呼んでるのに返事せえへんし」
「………」
「なんや財前、元気あらへんな? 体調悪いんか?」
「………」
「黙ってるだけじゃ、わからへんやろ?
あ、…雨や」
さっきまでは空が夕日の色に染まっていて、とても気持ち良い天気だったのに、いきなり雨が降り出した
その雨は一瞬のうちに土砂降りとなり、体温が奪われていく
「とにかく、雨宿りせんと…財前走れるか?手借りるで」
いきなり、謙也が財前を手を取り走り出した
あまりのいきなりのできごとに、財前は驚くばかりで
それでも一つわかることは、謙也の温かい手が、財前の冷え切った手を温めていること
それだけではない
財前の身体全体が冷え切った身体を温めている
それは緊張からくる熱なのだろう
心拍数が上がっている。ドクドクと
このまま死んでしまうのではないのだろうか。と錯覚するくらいに
この人が…謙也さんが好き
握っている手が震えている
この手が…謙也の手が…自分だけのものになればいいのに
絶対叶わないとわかっているのに
心の奥に閉まっておこうと決めたのに
この人を困らせたくなのに
すいません。謙也さん…俺、自分の気持ちを抑えられるほど器用じゃないっすわ
たとえ、どうなろうと
伝えよう。伝えてしまおう
そしてこの気持ちとは、これで…
「け…けん…やさん…すき…です…」
走りながら、乱れた息で、少しずつ言葉を繋ぐようにして、ようやく言えた言葉
伝えてしまった言葉は、もう戻すことはできなくて
これがこの人を思うことができる最後なのだと…そう思った
「ざ…いぜ…ん…今なんて…?」
財前の手を握り、前を走っていた謙也は走るのをやめて、乱れた息で、驚いたような、困ったような顔で財前に問いかけた
あぁ…謙也さんを困らせてしまった…絶対に困らせたくなと思っていたのに…
「すいません…俺…け…んや…さんがすきです…」
もう戻れない。自分で決めた
「なんで…謝るんや?財前は何も悪いことしとらんよ?」
きっとこの人は、「すき」の意味を間違っているのだろう
この人は鈍い人だ
だから、「すき」の本当の意味をわかっていない
ならば…今ならば、戻れるだろうか
「俺も…俺も財前がすき…やで
もちろん、恋愛感情的な意味で…」
「えっ…」
「財前のすきも恋愛感情のちゃうの?」
「は…はい…俺も…謙也さんが恋愛感情ですきです…」
ずっと言えなかった言葉
伝えてはいけないと思っていた言葉
絶対に叶わないと思っていたのに
雨で濡れている顔を、さらに涙で濡らす
もう雨で濡れたのか、涙で濡れたのか、わからないくらいに、顔をグチャグチャなのだろう
クールで無表情で…そんな財前などこにもいなかった
すると、そっと謙也に抱きしめられた
「なに、泣いとんねん」
「泣いてなんか…泣いっすわ」
「素直やないな。でも他の奴を誤魔化せたとしても、おれは誤魔化せへんで。
ずーと財前のこと見とったから、財前のちょっとした、表情の変化とかわかるんやで」
「ずーと見てたとか、キモいっすわ」
「財前も俺のこと、ずーと見てくれたんとちゃうの?」
「…アホ」
「さっ、はよ帰ろ?風邪引いてまうわ。あ、うち来るか? うちの方が近いし、着替えとか、シャワーとか貸したるわ」
「ま、いってやってもいいっすわ」
「よしゃっ、決まりな!」
そう言うと、謙也は再び財前の手を取り、走り出した
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