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魔法が解ける前に 12 聴くこと
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「・・・・・うん」
痛みが走り、思わずテーブルの下で拳を握りしめた。
あぁ、ついにこの時がきた。
今すぐここから逃げ出したい。
ああもうどうして。
ここには来るんじゃなかった。
オレの返事に昴くんはまたため息をついた。
「なんで・・・今まで騙してたんだよ」
「ごめんなさい・・・本当に、ごめ・・・」
『騙す』という言葉が胸に突き刺さって上手く喋れない。
痛くて痛くて吐血してしまいそうだ。
襟を強く握りしめながらなんとか謝ろうと必死に呼吸した。
すると目の前の男は苛立ちを抑えるように頭をがしがしと掻き回した。
「謝ってばっかりじゃ分かんないからさ、理解できるように最初から説明してくれる?」
オレは何度も頷いて乾いた唇を舐めた。
「入学してすぐに昴くんのことは噂で知ってた。昴くんには嘘ついてたけど、オレ達学部も一緒なんだよ。
それで、どんな人なのか見たいと思って、噂を頼りに同じ授業をとった・・・・・・一目惚れだった
その、皆川にバレるくらい分かりやすかったみたいで・・・」
皆川の名前を出した途端昴くんの目つきが鋭くなり、オレは口をつぐんだ。
「それであの合コンか・・・・・・」
「そ、そう・・・昴くんはノンケだし、あっ、女性にしか興味ないってことね?だから女装して行って・・・・・昴くんに出逢った」
「じゃあ、本当に薫は俺の事好きだったのか・・・・・」
良かった、と吐息まじりに小さく聞こえた。
驚いてゆっくり顔を上げると、昴くんは口元を隠しながら視線を反らした。
頬が上気している。
いやまさか。
「昴くん・・・・・・?」
「いやなんでもない。それで、薫はいつ俺の事嫌いになったんだ?てか今までどこにいたんだ?ずっと留守だったから・・・」
「え、皆川の家に・・・・・・えっ、なんでオレが昴くんのこと嫌いってことになってるの?嫌いになったのは昴くんの方じゃないの?」
だんだん頭が混乱してきた。
昴くんはオレを詰るために呼んだのではなかったのか。
確かにレイプされそうになった時はショックだったし、部屋に入ったことにもびっくりした。
でも嫌いになんてなってない。
それは今日昴くんを見てはっきりした。
オレはまだ、昴くんのこと。
「なんで?別れようって言ったのは薫じゃん!それに俺は、薫のことが嫌いになったなんて一度も言ってない!」
「それって・・・・・・・・・」
あぁ、また自分に都合のいい解釈をしようとしているのではないか。
ごくりと唾を飲む音が聞こえた。
「まだ別れたくない。俺を好きになって、薫」
「・・・・・・・・・!」
これは本当に現実?
バカな夢をまだ見ているのだろうか?
こんな、男で嘘つきで泣いてばかりの、ありのままのオレを受け入れてくれる?
なんて顔をしてるの昴くん。
カッコ良くみせようとしても緊張で唇が震えてる。
オレがなんて答えるか知ってるくせに。
あーもう、また泣きそう。
「こんな、男なのに・・・オレ、ごめん、好き・・・大好き、昴くんのことが
、まだ好きで―――――――!」
近づいてきた昴くんの匂いにオレは静かに目を閉じた。
好きな人の唇が自分の唇と重なっている。
そっか。
キスってこんなに気持ちいいものだったのか。
END
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