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美しい獣 3
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(もう、最悪・・・・・・)
マイクを通して聞こえてくる教授の声。
移り変わるパワーポイントのスライド。
割と好きな講義内容のはずなのに、頭に全く入ってこない。
それもこれも、昨日の大事件のせいだ。
小鳥のさえずる朝、気がついたら俺は裸でシーツもベタベタ。
背後から俺を抱き締めている男も裸で、規則正しく寝息をたてている。
(あ、大学に行こう・・・・・)
俺は起こさないよう静かにベッドから降りた。
いや、転がり落ちたに近い。
腰やら股関節やら脚やら、とにかく下半身が痛すぎて力が入らない。
すてん、と座り込むと体の中からどっぷり大量の精液が溢れてきて、咄嗟に身体を強張らせた。
途端に夜の出来事がフラッシュバックする。
そうだ。
俺は因さんとセックスしてしまったのだ。
あの後、中に出す度に前から後ろからと体勢を変えられ、もうどっちの精液なんだか分からないくらいドロドロになって、最後は気を失ってしまった。
「~~~~~~~~ッ!」
声にならないうめき声すら掠れて、俺はほふく前進しながらなんとかシャワールームまでたどり着き、支度を進めた。
身を清め、服を着替えてベッドを見ると、二日酔いのせいか記憶を掘り起こしているせいか、顔面蒼白という言葉が似つかわしい因さんがいた。
無言で頭を抱え、ピクリとも動かない因さんを怪訝に見つめると、泳いでいた視線がこちらをやっと見た。
「君は、誰・・・?ここは・・・?」
「・・・・・・・は?」
まさか、この男。
情交に及んだ昨晩のことをおぼえていないのか。
半ば無理矢理誘ってきたのはこいつのくせに?
あんなに激しかった性行為を、忘れただと?
因さんはまるで俺の方が悪いとでも言いたそうな顔をし、そさくさと自分の服を着だした。
「ごめん、君が誰だか知らないけど、昨日何があったかボクは覚えてない。きっと泥酔してたから、一晩泊めてくれたんだよね、ありがとう」
「いや、泊めたことはどうでもいいんだけど・・・・え、何?覚えてないんスか?」
俺の動揺も伝わらず、因さんはズボンのポケットから数千円を取り出すと俺の手に握らせた。
「え、なにこれ?」
「泊めてくれたから謝礼金。手持ちがそれしかないけど、君、学生っぽいしこれくらいで充分だろ?それと」
がしりと肩を掴まれると、目をそらせない距離まで顔を近づけるものだから、一瞬キスされるのかと思った。
因さんの目が琥珀色に煌めき、思わず身構える。
この色を見た途端、俺は因さんの命令に全て従わなくてはいけないような気分になり、自分から腰まで振ったんだ。
「昨晩起こったことも、ボクに関する全てのことも、全部忘れてなかったことにするんだ。いいね?」
まただ。
命令が頭に直接響くみたいな。
けれど、この命令には本能的に逆らえるような気がした。
それよりも、全部なかったことにしようとしているこいつに対して沸々と怒りが込み上げてくる。
「・・・っ、ざけんな!このクズ野郎!」
「ぶっ!」
俺は衝動的に、ひげ面に渾身の一撃を食らわせた。
因さんは間抜けな声をあげて尻餅をつき、頬を抑えながら涙目で俺を見上げた。
「ぅ、痛い・・・・・」
クソ、痛いのは殴った拳の方だ。
「これは返します。こんなのいらないし、俺は女じゃないから責任とれとも言わねぇ」
「じゃ、じゃあなんで殴ったの?」
キョトンとした顔が余計に俺の怒りを増幅させる。
「腹が立ったから!善意で一晩泊めてやったのに、変な魔法みたいなのかけて好き放題やりやがって!挙げ句にまた変な魔法と、こんな小金で解決しようとするとかサイテーだろあんた!」
「え、気づいたの?」
「はぁ!?」
いくらなんでも金で解決しようとしてることなんて分かるに決まってる。
因さんは俺を相当なバカだと勘違いしてるらしい。
「今すぐ出てけ!優しくした俺がバカだったんだ!
消えろクズッ!ヤリチンッ!アル中オヤジッ!」
もう一発お見舞いしそうになったが、俺の剣幕に驚いた因さんは体のバランスもまともにとれないまま玄関から出ていった。
人生で最悪な朝だった。
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