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ウサギとカメ6
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絶望が亀太郎を襲った。
「・・・・・そんな」
亀太郎は破壊された看板を目の前に呆然と立ちつくした。
この山には初めて登った。
先の道順なんて分かるわけがない。
「ど、どうすれば・・・・・・」
右の道を見てから左の道をみる。
だが、どちらへ行ったらいいのか亀太郎には全く検討もつかなかった。
(もうラビは祠についてしまっているかもしれない・・・)
嫌な考えがふいに浮かんだ。
不安感は壊れた看板のせいで煽られっぱなしだ。
ふと、嫌な影が亀太郎をそそのかしてきた。
最初からこんな競争、無意味だったかもしれない。
足が遅いことなんか、自分でもよく理解していたのに。
妹が不幸にも好きでもない男と結婚するという結果は、もはや運命だったのかもしれない。
自分がどんなに頑張ったって、運命には逆らえない――――――。
もうこのまま帰って楽になってしまおうか、と思ったその時。
『ありがとう、兄さま』
妹の声を思い出した。
不器用でどんくさい自分を信じてくれた妹の声を。
「・・・・・・オレは馬鹿か」
亀太郎は自分の頬を両手で叩いた。
影はみるみる退いていく。
信じてくれ、とあれだけ自信満々に言ったのに、ここで諦めてどうする。
兄として、してやれることなんてこれくらいしかないだろう。
きっとまだラビは祠にはついていない。
自分の努力次第で、未来は変わるのだ。
亀太郎は自分にそう言い聞かせ、安全そうな左の道を進んだ。
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