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ウサギとカメ7
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ウサギさんの忘れもの
~ラビside~
祠の前でしばらく待ってみても亀太郎は現れなかった。
きっと亀太郎はあの粉々になった看板を見て帰ってしまったに違いない。
人の意志なんてこんなものだと落胆しながら、ラビは紅玉を手に取った。
(亀太郎なら、僕を僕自身の歪んだ偏見や常識から救ってくれると思ったのに)
ラビは人が言う、『頑張る』という言葉が信じられなくなっていた。
ラビの周囲には善処すると、口先ばかりで結果を出さない人間があまりにも多かったのだ。
あれだけ妹のためだといいながら、最後は我が身の可愛さゆえに、亀太郎はあっさり諦めてしまったのだ。
空を見上げると、雲行きが怪しく、山の全体に霧が立ちこめていた。
「・・・・・・つまんないなぁ」
ラビは祠の戸口を閉めると、来た道を戻り始めた。
しばらくすると、あの粉々になった看板があった場所にたどり着いた。
無視してその場を後にしようとしたとき、ふいに亀太郎の必死さを思い出した。
――――――もし、亀太郎が諦めていなかったとしたら?
そして、もし亀太郎が道を間違えていたとしたら?
ラビは自分の予想に思わずたじろいだ。
「いやいや、そんなはず・・・・・・」
自分の考えを皮肉げに笑ってみたが、心臓の鼓動は速まるばかりだ。
「・・・・・・っ」
(少しだけ・・・。そう、これは確認だ。
僕の考えが正しいことを証明するだけの・・・)
ラビは自分の心配する気持ちに言い訳をつけながら、亀太郎が進んだ道に進んだ。
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