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ウサギとカメ8
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~ラビside~
道を進んでいくと、声が聞こえた。
それも泣き声だった。
ラビはその声に冷や汗をかいた。
亀太郎が先にいるのだと、分かったからだ。
行ってみると、崖にも近い急な坂の下から亀太郎の大きな泣き声が聞こえてきた。
下を覗いてみるが、霧が濃いせいで亀太郎が見えない。
「亀太郎さーん!」
試しに呼んでみると、ぴたりと泣き声が止まった。
下のほうでぼそぼそとした声が聞こえてくる。
「えっ、・・・ラビ・・・?
いや、そんなはずないだろ・・・・・。
幻聴がする・・・うあああんっ」
再び泣き出す亀太郎に、ラビは困ってしまった。
おそらくなんらかの理由で落ちてしまったのだろう。
一応無事なようだが、声をかけただけでは泣き止んでくれないらしい。
「仕方ないな・・・・・・」
ラビはため息をついた後、自ら坂を降りた。
すると、やはり涙と鼻水でぐちゃぐちゃな顔をした亀太郎が切り株に座り込んでわんわん泣いていた。
「亀太郎さん」
声をかけると、亀太郎はきょとんとし、ラビを見つめた。
「ラ・・・ビ・・・?」
亀太郎は袖口でごしごしと自分の顔を拭い、確認するようにラビを凝視した。
「そうだよ、亀太郎さん」
亀太郎の前でしゃがみ、目線を合わせると、亀太郎は再び泣き出した。
「うわああ、ラビだあぁぁっ」
突進するがごとく勢いで抱きつかれたため、ラビは後ろへ尻餅をついてしまったが、亀太郎は気にせず力いっぱいにラビを抱きしめてくるのをやめない。
「お、オレっ、びっくりしてっ・・・!
でも、道がっ・・・うぅっ、それでもオレっ、諦めたくなくて・・・っ、足がっ・・・」
ラビの胸元に顔を押しつけてなんだか色々説明しようとしているが、何が言いたいのかさっぱり分からなかった。
とにかく落ち着かせようとラビは亀太郎の背中をゆっくり優しく叩いた。
「ん、分かったよ・・・分かった」
思っていたよりもずっと亀太郎は子どもっぽくて、ちょっと泣き虫なのだと、ラビは初めて知るのだった。
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