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魔法が解ける前に 7
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「・・・・・・落ち着いたか?」
皆川の部屋で、緑茶の入ったマグカップを受け取った。
指先に伝わる熱が心地よかった。
あの後、自分の家に帰る気になれず、ましてや戻ることもできず、皆川を頼った。
突然家に行ったから驚いていたが、オレの姿を確認するなりすぐにあげてくれた。
着替えも貸してくれたが、ブカブカのトレーナーとスウェット以外になかったのかとツッコミをいれたくなった。
おかげで袖を捲り放題である。
・・・絶対に言わないけど。
「ありがとう、皆川」
「素直すぎてキモいなお前。今度昼飯奢りでチャラにしてやるよ」
「・・・お前の昼飯って水さえあれば充分だったよな」
「植物かよっ!肉だ、肉をよこせ!」
「ぷっ、・・・はいはい」
わざと冗談を言って笑わせてくれるのが、とても嬉しかった。
皆川が友達で本当に良かったと思う。
緑茶を少し啜った後、オレは話すことにした。
皆川はオレが話し終えるまで黙って聴いていてくれた。
最初は訝しげに頷いていたが、話を進めるにつれて眉間のしわが濃くなっていくのをオレは見逃さなかった。
「おいおい、爽やか気取りの美青年は実はヤンデレ犯罪男だって?そんなのアリかよ」
「・・・・・今までも、たまに束縛が激しいなって感じる時があったんだ。
だけど、家に入るだなんて・・・」
「警察には?」
「言わない、絶対に。だから皆川も秘密にしてくれ」
「・・・お前が言うならそうするよ」
皆川のその言葉に安堵し、緑茶を静かにまた飲んだ。
「昴くん・・・・・・」
自分から別れを切り出したにも関わらずふとしたとたんに涙が止まらなくなる。
「オレ・・・・・どうしたらいい?」
昴くんが好きだった。
いつも遠目でしか見れない昴くんと1年もお付き合いできるなんて思ってもみなかった。
幸せだった。
一生忘れられない時間だった。
だからこそ、この先どうしたらいいのか分からない。
皆川はすぐに答えはくれなかった。
やかんを差し出され、自分の温くなったマグカップを渡すと皆川は黙って注いでくれた。
「何日か・・・泊まっていけば?」
皆川が静かに言った。
「今のお前を独りにはしておきたくないんだ。できることなら支えになりたい」
皆川の優しさが心に染みた。
「・・・・・・ありがとう。
皆川っていい夫になりそうだな」
「当たり前だろ?こんないい男に気づかない奴はどうかしてると思うぜ」
「皆川なら、きっといい人見つかるよ」
励ますつもりで口にしたつもりなのだが、皆川は言葉を詰まらせた。
「お前がいい人だとなんか調子狂うわ」
真剣な顔で嘆く皆川にオレは呆れるしかなかった。
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