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#39
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「……っ!!!」
俺は閉じたケータイを力の限りソファに投げつけた。
「…………ぅ、…っ、…ぅあぁ…!!」
俺は、涙が止まらなかった。
親が離婚して、自分を引き取った親が自分のことを捨てて出て行ったせいで、それがトラウマになって自分が自分じゃなくなる、なんていうのは漫画とかアニメとかだけの作り話でしかないと思っていた。
現実でなんてあり得ないと思っていた。
それが、優には起こってしまった。
非現実的だからこそ、優のことが可哀想に思える。
起こったことの重みが、俺には計り知れない。
……俺は、これを知ってどうすればいいんだ…。
…こんな話、聞かなきゃよかった……。
…………でも、香織さんも言ってた。
これ以上、優を傷付けたくないって…。
………なら、俺は、これからどう優に接すればいい…?
今まで通りに?少しでも気を遣ったほうがいい?
いや、普通に接するべきだよな…。
このことは、俺しかまだ知らない。
広めることなんて出来ないし、優も知られたくないって言ってたみたいだし。
…………あれ?
…さっき、俺が優と家に遊びに行ってたときの優は…?
……知られたくないって…、何の話をしてたんだってしつこく香織さんに問い詰めてたのは、……優…?
…………優じゃない。
……あれは光だって、香織さんが言ってた…………。
ズキズキ……
『光の話によれば、優の人格が現れているときは、光はまるでテレビを見ているように1枠くらい遠くからこちらを見ている。だから光は自由に自分の意思で私たちの前に現れることが出来る。
でも、光の人格が現れたときは、優は光が現れていることを知らないみたいなの。
だから、光は優の人格のときに起こったことは知っているけど、光の人格が現れているときの記憶が、優の中からスッポリと抜けている状態なの。
武博君も、そういうのなかった?自分は優と話していて、一緒にいたつもりだったのに、後で聞いてみたら優が何にもそのことを覚えていないっていつの。
それはつまり、さっきまで一緒にいた優は、光だったっていうことなの』
「…………優じゃ、なかった…?」
『それはつまり、さっきまで一緒にいた優は、光だったっていうことなの』
「━━━━━━━━………………………嘘、だろ…………。」
…………優じゃ、なかった。
……じゃあ、今まで一緒に出掛けても次の日には優が何にも覚えてなかったのは、俺が一緒にいたと思っていたのは優じゃなくて、″光″だったから……?
…俺はずっと、優だと思って…。
…でもあれは優じゃなくて…。
…いっぱい出掛けて、楽しい思い出作って…。
…でもそれを全部優は忘れていて…。
………………俺は、優じゃなくて光と一緒にいたのか…。
………………………………嘘だろ……?
…………俺、あんなにいっぱい優に好きだって…、…………あれ…?
「……………………俺は、あの日どっちに好きだって言ったんだ…?」
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