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#53
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俺は溢れる涙を拭いながら、ふらつく足取りで玄関に向かった。
………もうダメだ…。
…もう…!……もう…ッ!
ドンッ
「うぁっ!」
ちゃんと前を見ないで走っていたせいで、脇から出てきた人に勢いよくぶつかり、2人とも後ろに尻餅をついてしまった。
「いっててて…。…あれ、タケじゃん。…って、え!?タケどうした!?」
運が良かったのか悪かったのか、ぶつかった相手は明良だった。
明良は、俺が泣いてぐちゃぐちゃの顔をしながら猛突進してきたことに驚いているようだった。
先に立ち上がった明良が、そんな俺を立たせてくれようと手を伸ばしてくれた。
でも、俺はその手を取れなかった。
……もう、明良の顔さえ見れなかった。
「…ぁ、あき…らぁ…。……明良ぁあぁあ…ッッ…!」
俺は、立ち上がった明良の足元に泣き崩れた。
床に両手の握り拳をつけ、溢れる涙と声を拳と共に床に叩きつけた。
「…ちょ、タケ!?どうしたんだよ…、何で泣いて…。」
明良が困ったようにおろおろしているのが見なくてもわかった。
でも俺はその明良を安心させてあげられない。
溢れた涙を止められないのだから。
俺は足元にあるの優の制服のズボンの裾を掴み、ひたすら上がりきった息遣いで明良の名前を呼んだ。
「ぁ、あっ…あきっらぁ…、あ、あ、明良ッ、あき…、あっ明良…ッ、………ぅあわぁあぁぁぁあああ…ッッ。」
俺の声を聞いた明良は、持っていたエナメルの鞄から未使用のタオルを出すと、俺の頭に掛けて、俺の顔を隠してくれた。
そして、俺の震える頭をタオルの上から自分の胸に押し当てて、優しく言った。
「…落ち着け…、何で泣いてんのかわかんねぇよ…。」
「だ、だっでッ!俺ッ、俺……ッ…!ぅうっうぁああ…。」
「だから落ち着けって…!……まだ何も話すな。……タオル貸しててやるから顔隠してろ。………ひでぇよ。…とにかくどっか移動すんぞ。…………教室…はダメなのか?」
今は絶対に教室に行けない。
その一心で首を何度も大きく縦に振った。
「……わかったよ。………じゃ、選択教室行くぞ。」
そう言われ、俺はふらつく足に力を入れ、明良に支えられるようにして移動した。
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