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#59
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2人の鍋を混ぜて作った汁で、お互いの鍋を見事完食させた。
実際のところ、優のほうは運ばれてきたときから既に具が真っ赤だったから、俺よりも辛さはあったみたいだが、それでも辛いと言って汗をかきながら、美味しそうに食べていた。
ご飯を食べ終え、胃袋が膨れた。
「……はぁー。……腹一杯で動けねぇ…。」
俺は後ろに手をつき、体を休めた。
「俺もー…。変な汗かいたし。』
「あれは辛かったもんなー。あんなの普通に食べれる奴いんのかよ。」
俺たちは軽くダベりながらパンパンになった胃袋を休めた。
しばらくして、やっと少し食べたものが消化された気がして、動けるようになった。
そろそろと帰ろうかと思い、ケータイで時間を確認する。
3時を少し過ぎた頃だった。
「…さて、そろそろ店出るか。…結構長くいたみたいだし。」
そう言い、鞄から財布を取り出そうと、鞄の中をまさぐる。
するとー…。
━━━━━━━━━━━━フッ…。
……………………え……?
一瞬にして空気が変わった。
そして背筋を何かが這い上がっていく感覚に襲われた。
体全身が鳥肌がたったような感覚になり、電流が流れたかのようにビリビリと頭のてっぺんから足の爪先まで痺れたようだった。
…………もしかして……。…………光……?
目の前の奴は、今まで俺が一緒にいた優の体をして、窓の外をボーッと見つめている。
でも、その体を取り巻く雰囲気が違う。
妙に荒々しくて、男っぽくて……。
明らかに、優とは違う。
そしてそいつは、俺の目の前でいつもの癖をした。
左側の髪を、耳にかけた…。
……………………やっぱり、そうだ……。
俺は、恐る恐るそいつの名前を呼んだ。
「………………こ、光…、だよな…………?」
「……………………えッ…。」
俺が突然光が現れて驚いたように、光も俺に言い当てられて驚いたようだった。
でも、すぐにその困ったような顔色を、諦めの顔に変えた。
「……俺が出ると、すぐわかるんだな…………。」
溜め息混じりの言い方が、光らしくなかった。
「…………まぁ……。…………優と、ちょっと違う感じするから…。」
「………………そうか……………。」
最後に会ったのが教室のあのときだったから、何となく2人きりでいるのが気まずく思えた。
━━━ 『……………行けって言ってんだろッッッ!!!』
この言葉が、頭の中で鮮明に蘇った。
また光の機嫌を損ねて怒鳴られるかもしれないと思い、なかなか言葉が出てこなかった。
それは光も同じようだった。
チラッと光を見ると、少し困ったように視線を下で泳がせ、唇を硬く結んでいた。
しばらくの沈黙が続き、その沈黙の重さにこれ以上耐えられなくなった俺が口を開いた。
「……………………あ、のさ…。……お前、何か用だったんだろ?……優が俺と一緒にいたのをチャンスだと思って出てきたんだろ…?……それとも、また俺のせいで優が嫌な思いを感じた…、とか……?」
言っているうちに自信がなくなってきて、声が徐々に小さくなっていった。
でも光はその俺の声に負けないくらい、か弱い声だった。
「…………違う…。……………俺が、自分の意思で出てきた…………。」
……………ダメだ……。
……光の声を…、顔をまともに見れない…………。
ズボンの布を強く握りしめた。
「…………………お前、…最近俺にも…、優にもあんまり会ってなかっただろ…?」
……………そうか、優のときの記憶は光にも残るのか。
それなのに、光の記憶は優には残らない。
…………………なんて体してんだよ……、お前らは…!
「…………それで…。…………俺、ずっと言いたかったんだ。…………あの日からずっと……………。」
「………………………俺、ずっと武博に謝りたかったんだ…。」
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