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#60 謝罪
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…………謝る…?
………………光が、俺に……………。
「…………本当に、お前を騙してて悪かったと思ってる。
あの日にああ言われて当然のことをしたと思ってる…。
…………優にも、迷惑掛けたと思ってる…。
……………本当に……。…………………ごめん…………。」
光が、テーブルに頭がつくギリギリのところまで頭を下げた。
「本当に、悪かった…。
…俺は、お前の言ったとおり、お前の気持ちを弄んでたのかもしれない。
…………お前から優に向けられていた好意を、俺が勝手にオモチャみたいに優から取り上げて、本当は優に渡されるはずなのに、俺が奪ってめちゃめちゃに壊した…。」
……意外だった。
光がこんなことを思っていたなんて……。
「…………お前の言う通り、俺はもう絶対にお前の前に現れない……。
…でも俺は優の中からまだ消えられない。
……………だから、お前はもう俺のことを忘れていい。
…忘れて…、なかったことに…、俺なんて、最初からいなかったんだって思ってくれていい…ッッ!!
…………だから、そのかわり…。…………………その気持ちも忘れないで、優のこと…、守ってやってほしい…ッ!
…………………ホントに、今までごめん…!」
……………苦しい言葉なのだろう。
……自分の存在を否定する言葉。
話し続ける度に、光の顔が歪んでいった。
それを言うごとに感じる痛みが、俺の胸にも伝わってきた。
俺はこれ以上、傷つけたくなかった。
……………優のことも。
…………………光のことも…。
「……光…。…………顔上げて。」
静かに顔を上げる光。
でも、俺たちの視線は交わらない。
「…………何個か、聞いてもいいかな…?あのときは俺もちょっと混乱してたから…。」
「……あぁ。」
「………………言いたくなかったら、答えなくていいんだ。だから、言えることだけ、」
「いいんだ。……………ちゃんと、全部言う。」
さっきとは違う、力強い声だった。
「……まず。……………お前は、俺と一緒にいたときは、いつも出てきてたのか?」
「………どういうことだ?」
「…えっと、だから……。……………俺が優に告白して、お前が返事をしてからは、俺と2人でいるときも、学校にいるときも、いつも優じゃなくて、お前が現れてたのか?」
「………………………大体は、優の方だろうな。……俺は、優の学校に生活に支障がないように、優が学校にいるときは出ないようにしてるから。俺が出てると、勉強とか部活もやってなかったことになるから、優の学力がこれ以上落ちたらヤバイからな…。」
なるほど。
確かに、学校内で光だと思ったことなんてないし、光のやったことを何も覚えていない優にしたら、学校にいるときは光が出てきていたら大変だ。
授業の内容が頭に何も残っていないことになるのだから。
「……詳しく言うなら、告られた後に一緒にあのケーキ屋行ったり、買い物行ったり、旅行行ったのも、本当は俺なんだよ…。…………あの、文化祭のときもほとんどずっと…。………俺は、お前と2人きりのときしか、出てきてない…………。」
チクリと胸が痛んだ。
俺はその痛みに耐えるように、ズボンを握り締める力を強くした。
「……次…。」
これは、俺が明良から聞いて、ずっとどっちだったのか考えていたことだ。
それが、なかなか口から出ない。
その言葉を、俺は必死に喉から出して光に投げかけた。
「……俺が、熱出てたとき……。……………家に来て俺のこと看病してくれたのって、……………明良じゃないのか……?」
その問いに、そっと光が頷いた。
そして一言呟いた。
「…………………あのときは、俺だったよ…。」
「………………………どうして……………。」
「……どうしてって……。」
「…別に、それが嫌だったんじゃない。……むしろ、感謝してる…。……………でも、どうして来てくれたのかなって……。」
声が震える。
……何言ってるんだ、俺……!
「……ただ、俺がお前のこと心配だったからだよ…。…………ただ、それだけだよ……………。」
当たり前のように言う光。
……………わからない…。
…………………光の考えていることが、わからない……ッッ!
……そもそも何で俺の告白の返事を、優じゃなくて光がしたんだ……?
……………優が俺に告白されて、嫌に思った…?
……………だから光が出てきてしまって、優の代わりに返事をした…?
…………………違う…。
……優は俺のことを何とも思ってないはずだろ……?
………それを光だって知ってるはず…………。
…………じゃあどうして……?
……………………これで、最後。
最後の質問…。……………もう、何も聞かないから…。
俺自身、今までの光から返ってきた答えが胸に突き刺さり、それが痛みに変わり、それに耐えられなくなっていた。
「…………………最後に…。」
……………俺は……。
…………………優が好き……。
「……お前は、優が俺のことを何とも思ってないことも、俺が優に告白したことも知ってるはず……。」
……優は、俺のことを何とも思ってない……。
「………………………ならどうして、俺の告白の返事をお前がして、俺の期待に添うようなことを言ったんだ……?」
…………じゃあ、光は…………?
「━━━━━━光は俺のことを、どう思ってるんだよ…。」
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