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#63
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パシャン…
ぬるま湯を手にすくい、顔に当てる。
冬にしては快晴の朝で外はとても爽やかなのに、鏡に映る俺の顔は最悪だった。
目元が真っ赤に腫れ上がり、まぶたが大きく膨張していた。
昨日は雨に打たれたまま家に戻り、その後は何もする気になれず、早めに風呂に入ってすぐに布団に潜った。
それでも一向に眠れず、布団と枕を濡らし続けるだけ。
前に熱が出たときと同じようなことになりそうだった。
さすがにそれはよくないと思い、今日は食パンを1枚食べて学校に登校した。
クラスメイトからの反応は思っていた通りだった。
みんな、目元の腫れや元気がないことを心配してくれていた。
特に、明良が。
「……お、おい、タケ……。どうしたんだよ、その目…!」
「………ん、まぁ、……いろいろと…。」
明良には俺と優、そして光の関係を話してある。
だから、俺の言う『いろいろ』の意味がわかってしまう。
明良は俺の言いたいことを悟ったのだろう。
誰が関係しているのかは聞かなかったものの、そいつと何があったのか聞いてきた。
話したいのは山々なのだが、何て言ったらいいのかわからない。
ひとまず、昼休みに明良に相談することにした。
昼休み。
俺と明良は、屋上への階段に座り話すことにした。
「……で、どうしたんだよ…。何があった…?」
単刀直入すぎて言い出しにくい。
一応、明良に誰のことが関わっていると思っているのか聞いてみた。
「…そりゃ、優だろうな…?…………いや、……″光″…かな…。」
見事的中。
こういうときに勘が鋭い奴は頼れる奴だ。
「…………そう…。」
「……その光と、昨日何かあったんだろ?」
「…………うん……。………………俺、光と別れることになったんだ……。」
自分の口から言うだけで、胸が苛まれる。
まだ好きなのに…………。
…2人とも、まだきっとお互いのことを好きなのに……。
「……お前、前に教室で光に怒鳴ったんだろ?…お前のせい、とか優との思い出を消すな、みたいな。」
「…………言った…。……でも、俺わかったんだよ。………………俺は、優のことが好きだった。…その後、光のことも好きになったんだ…………。」
確かに、教室で初めて光に会ったときの俺は、優のことしか見えていなかった。
俺がずっと一緒にいた奴が優で、俺の大好きな奴との思い出だったんだと信じたかったんだ。
でも、実際はそれは優ではなかった。
それは光だったんだ。
俺は、何度も自分に好きだと言ってくれて、俺のことをいつも助けて守ってくれた人に、まともにお礼も言えず、逆に失礼なことを言ってしまった。
こんなにも俺のことを大切にしてくれていたのに、俺は自分の好きな人、自分が夢に描いていた人との関係ばかりを気にして、愛してくれてた人の気持ちも何も考えられていなかった。
だから、あのとき俺はあんなことを言ってしまったんだ。
だから、俺はその人に1番辛い言葉を言わせてしまったんだ。
俺自身が中心の物の見方ではダメなんだ。
光中心に物を見れば、そんなの一目瞭然だったんだ。
光はあの日の俺の言葉で、どれだけ傷ついただろう…。
死ねとか消えろとか言ってしまった。
…………優の感覚を消さないでほしいなんて、意味わかんねぇじゃねぇかよ……。
…優の感覚も何も…、……あのときの優は全部、光だったんだから…………。
…………俺は優のことが好き。
……………………好き、だった……。
それ以上に、俺は光のことが、好きなんだ……。
…最初にあの2人のことを好きになったのは、優だった。
優を好きになって、俺はあの2人に告白したんだから。
…………でも、その後に好きになったんだ。
…………光のことを…………。
ずっと一緒にいて、楽しいことをいっぱいしていくうちに、光のときの優を好きになったんだ。
━━━━━ 俺は今でも、あの2人が好きだ…………。
…………俺が本当に好きなのは、1つの体を2人で共有する、優と光なんだ………。
…俺は、それを光に伝えたい。
自分を愛してくれていた光に、言ってやりたい。
………… 『お前のことが好きだ』って、言ってやりたいんだ。
でも、俺はまだそれを言えていない。
だから、俺はまだあの2人から離れられない。
光に自分から2度と現れないって言わせてしまったけど、そんなことさせない。
…………俺は、自分の気持ちをちゃんと光に伝えたい…。
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