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#67
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ガンッッッ!!
「い"ぃっつ……ッ!」
光の投げた机が、俺の右肩に強くぶつかった。
廊下から再び悲鳴が上がる。
「タケッッ!大丈夫か!?」
明良が俺に駆け寄り、力の抜けていく俺の体を支えようとしてくれた。
光も男子も驚いた顔をして、その場に立ち尽くしていた。
肩を押さえながら顔を歪める俺を見て、先生が半分怒り半分心配の気持ちですぐに保健室に行くように促す。
でも俺はその言葉を無視して、抜けていく全身の力を振り絞って呆然としている光に近寄った。
そして、震えている光の手に触れた。
「………落ち着いたか…?」
「…た、武博……。」
「…………大丈夫…。…大丈夫だから、…もう、やめろ……。」
光の瞳が潤んだ。
そして光の体から怒りの力が抜けていくのがわかった。
俺も余りの痛みに、その場に膝をついた。
それとほぼ同時に、先生たちが3人ほど教室に入ってきた。
光と男子生徒たちはその先生たちに連れられ、教室を出ていった。
そして、ぞろぞろと廊下にいた生徒たちが教室に入ってきて、荒れた教室を整え始めた。
改めて見ると、教室は酷い有り様だった。
それが、光がたった今やったことで、いかに光の力が強かったかがわかって胸が痛んだ。
優と光が別の人格であることを、目の前で強く見せつけられた気がした。
「タケッ、早く保健室…ッ!」
「痛っ…。そんな、強く引っ張るなって…!」
明良が俺の腕を掴んで廊下へ引っ張って、保健室へ歩いていく。歩く度にズキズキと肩に痛みが走る。
「わ、悪い…。………でも、…ごめん…。」
「…何が?」
「……お前らのこと、知ってるの俺だけだろ?…優と光のこと知ってるのも…。………それなのに、俺は見てるだけで何も出来なかった…。」
「…気にするなって。……あんな状況でどうにか出来るようなもんじゃないし、俺だってこんな…。」
「それでも、俺は……。…………頭では理解してたつもりだったのに、いざ目の前にしたら、…急に光のことが怖くなって……。……動けなくなった…………。」
明良が珍しく悲しそうな顔と声を見せた。
……光が怖い、か………。
「…………俺だって、そうだよ…。………さっき、光のこと、すんごい怖かったよ…。」
明良が進めていた足を止めた。
そして、振り返るようにして俺を見つめた。
俺は顔を見られたくなくて、下を向いた。でも、明良にはバレただろう。
俺が堪えきれない涙を床に溢したことを。
「……怖いよ…、怖かった…!…俺だって光のこと、ちゃんと理解してたつもりだったけど、あんなに暴れてるの見るの初めてだったし、どうすればいいのかわかんなかったよ…。……本当に、優じゃないんだって思って…。」
溢れる涙は止まることを知らない。
制服の袖で目元を覆っても、昨日あんなに泣いても、今日の涙は流れ続けた。
「…………でも、…止めなきゃって思った……。……いくら怖くても、あいつは俺のことを守ろうとしてくれたんだって思ったら、体が勝手に…。……あいつが俺を守ろうとしてくれたなら、俺は少しでもあいつが傷つかないようにしてやりたくて…ッ!」
……ダメだ…。
…光に出会ってから、俺、泣いてばっかだ……。
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