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#72 守りたいものは
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「…………光のことを、優の中に戻してあげられませんか…?」
俺は、あの2人を助けるのはこれしかないと思っている。
香織さんは、俺の思っていた通り驚いた顔をしていた。
「…戻すって言うのは、どういうこと………?」
「………つまり、優に光の存在を話すんです。」
「………………………。」
香織さんが険しい顔で腕を組ながら考え込んだ。
俺はそんな香織さんを目の前にして、なおも話を続けた。
「別に、光が嫌だから消えてほしいっていうのじゃないんです。………でも、優の中に光が戻った状態が本当の優。…俺は、本当の優に幸せになってほしいんです。片方が幸せなのにもう片方が幸せじゃないなんてダメです…。………あいつらは、2人で1人なんだから…。」
「………でも、それは2人にとって、どちらにも辛いことなんじゃない?」
………わかっている…。
「…優が光のことを知れば、光の中に隠されていた負の感情が優の中に生まれて、今までとは違う人格になっちゃうかもしれない。…もしかしたら、光が生まれたときみたいに頭が痛いって言って苦しむかもしれない。」
確かに、優にはリスクが大きすぎるかもしれない。
医者にも行かなかったのだ。
何の知識のない俺たちが、患者をどうこうしていい問題ではないかもしれない。
「………光は、自分が消えることを嫌がるかもしれない…。」
………光が、嫌がる…?
「光は乱暴だけど、誰よりももう1人の自分である優のことを大事に思っている。…あいつもバカじゃない。………自分が消えれば、今まで自分の中で耐えてこられた苦しみを優に与えることになるのは十分わかってるはず。」
「………………。」
「……優に自分の分の幸せも背負わせて、自分は優の分の不幸も背負う。それが今のあいつがいる意味。…………そして、あいつが生まれてきた意味だから…。」
…………バカじゃねぇの、光…ッ!
「……………光は誰よりも優を傷付けたくないと思ってるのよ。」
俺は、光のことを少し見くびっていたかもしれない。
こんなにも光が優のことを思っているなんて知らなかった。
…………光は、全然乱暴な奴じゃない。
…優の為に振るう暴力なんて、正しい正義だろ…ッ。
「…………リスクも…、あいつらが嫌がるっていうこともわかってます…。………でも!」
このままでは、ダメなんだ。
そう確信している。
「……それでもいい…。………人生っていうのは、そういうものでしょ…?」
誰かが何とかするじゃない。
俺が何とかしなくちゃいけないんだ。
「…喜びしか知らない。…痛みしか知らない。………そんな人生なんて、良いとは言えない…ッ!」
…………俺は、あの2人が大好きだから…。
「…………俺が守りたいのは、優の幸せじゃない。…光の幸せでもない。…………あの2人の幸せなんです…ッッッ!!」
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