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…ボスッ
「…はぁあ…。」
俺はベッドにダイブし枕に顔を埋めて、大きく溜め息を吐いた。
……俺、何てこと言っちゃったんだ……。
さっきまで香織さんとあのちゃんこ鍋屋で話していたことを思い出して、自分は何てことを言ってしまったのかと懺悔していた。
…香織さん、生意気な奴だって思っただろうな…。
……弟の友達に、あんなこと言われちゃ堪んないだろうし……。
あの後、俺は香織さんにとんでもないことを言ってしまった…。
━ 『…香織さんやお母さんが、そんなことをしたくないっていうのはわかってます。…でも、俺はそれしかないと思うんです!』
━『……武博君、どうしてそこまであいつらのことを…?』
━『…………俺が、あいつら2人のことが好きだからです…。』
━『…それは、友達として?それとも…。』
━『……どっちでも間違いじゃないです。……俺は、優のことも光のことも大好きなんです……。』
……うわぁあああ!///
ヤッバ、マジでヤッバいって…!!
何であんなこと言ったんだ、俺はぁあ!!
俺は枕に顔を埋めながら手足をバタバタさせた。
今更とてつもなく恥ずかしくなって、いてもたってもいられなくなった。
…あぁ…、香織さん、さっき言ったこと忘れてくれないかなぁ…。
…ヴヴヴッ!
「うぉあッ!?」
いきなりケータイが鳴って、驚きで心臓が口から出そうだった。
しかも、相手はまたしても香織さんだった。
…何…?香織さんってエスパーなの…?
そう思いながら、香織さんからの電話に出た。
『あ、武博君?』
「はい、そうです。」
『ごめんねぇ、何回も。』
「いえいえ、お気になさらず。」
香織さんはさっき店で会ったときの口調とは別の、明るい口調だった。
『あのね、さっきの武博君が言ってた話、ずっと考えてたの。』
それを聞いて、再び背筋が伸びる。
自然と身構えてしまう。
『……さっきはあんな、反対するみたいな言い方しちゃったんだけど、やっぱりそのほうがいいと思って…。』
…え?
『…………優と光のことを武博君に任せたいと思うの。…任せるって言っても、私も母ももちろん協力するよ?私たちにすれば、優も光も大事な家族だからね。』
…………家族、か…。
『一緒に、光を優の中に戻してあげましょ?…本当の優を取り戻してあげましょ…!』
俺は嬉しくて仕方がなかった。
無謀だと思っていた自分の考えを認めてくれて協力しようとしてくれる人がいる。
それだけで俺には十分力になった。
「…………ありがとう、ございます…!」
『ううん。お礼を言うのは私たちにの方なんだから。……それで、光のことなんだけど、やっぱり部屋から出てこようとしなくて、話し掛けても返事もしないのよ。』
「……停学中はムリってことですね…。」
『…そうね。……優に光のことを話すのは、早くても停学が終わった日でしょうね。』
「…………わかりました。…それまでに、ちゃんと優に光のことを話せるように考えておきます。」
『…ありがとう。……迷惑掛けちゃって本当にごめんね。…でも、頼れるのは武博君しかいないみたい。…………なんせ、光が自分の部屋に人を入れるなんて、武博君が初めてだからね。』
「え、そうなんですか?」
『そうよ?…光って、自分の領域に人を入れるのを嫌がる性格だからね。だから私も、あいつの部屋に入ったのは優のときだけ。光に部屋に入れてなんて頼んでも絶対にムリだからね。』
「…………でも、俺には……。」
『……………そう。……私と初めて会ったとき、武博君を部屋に入れてくれたの、光だったものね。光が自分から人を招いたのは、武博君が初めてなのよ。……武博君は、光にとって特別な存在なのね。…………だからこそ、私は優と光を繋げることが出来るのは、武博君しかいないと思ってる。』
…………光……。
それを聞いて、かつて光が俺に言ったある言葉を思い出した。
━━━━━ 『………俺自身が、お前のことを好きだからだよ…。』
香織さんからその話を聞いたからこそ、その光の俺への言葉の意味が、いかに重いものなのかがわかった。
俺は本当に気付いていなかったのだ。
俺は優が好きだった。
でも、光は俺を好きでいてくれた。
…………俺は気付かないうちに、光の中で"特別な存在"になっていたのだ。
そう知ると、俺が優だと思っていたときの、光の言葉や仕草、行動の1つ1つがどんな意味を持っていたのかがわかる。
…胸が熱くなった。
『…責任を重く感じさせるような言い方で申し訳ないって思ってる。…………でも、改めてお願いするね。』
「…………香織さん…………。」
『……優と光を、助けてあげてね…………。』
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