アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
#76
-
…優が倒れた。
倒れた優に香織さんが駆け寄り、体を揺さぶり名前を呼ぶ。
でも、優は何の反応も見せない。
声を上げなければ、指をピクリとも動かさない。
……それどころか…。
「…ゆ、優…、息してない…!?」
…………嘘だろ…?
俺は立ち上がったものの、体が固まってしまったようで全く動かなかった。
その場にただ立ち尽くしてしまった。
「……ど、うしよ…、とにかく、救急車ッ!…優ッ、優…ッ!」
━━━━━━━━━━━━━━━…
その後のことは、まるで自分がテレビの外から香織さんたちの動きを見ているような感覚で、自分が香織さんたちとは別の次元にいるようだった。
無機質でモノクロに見える室内。
それなのに、倒れている優だけは生々しくて、リアル。
優が倒れたことは本当のことなんだと思い知らされるような感じだった。
しばらくすると、俺のモノクロの世界に救急車が姿を現した。
俺は香織さんと一緒に、優の付き添いで救急車に乗り込んだ。
病院へ向かっている間、香織さんはひたすら優の手を握りながら優の名前を呼んでいた。
でも、俺はそんな2人を見ながら思うことは1つしかなかった。
病院に着き、優が運ばれていく。それに付き添いながら香織さんも運ばれていく優の名前を呼びながら病院の奥へ消えていく。
そして俺だけがただ1人、病院へ入ってすぐの廊下に立ち尽くしている。
優の検査が終わり、待ち合い席で床を呆然と見つめていた俺に、香織さんがたった今医者に話されたことを話してくれた。
軽いパニックだったらしい。
優と光の二重人格のことは医者には何も話していなかったから、これを機会に詳しく話し、治療のこともちゃんと決めるらしい。
医者に優が二重人格で、今までそのことを知らずに生活してきて、それを話した直後に倒れたことを伝えた。
すると医者が言うには、自分が二重人格で光という別の人格と自分の感情を共有していたことを知り、光が今まで持っていて優の隠されていたトラウマ、悲しみ、怒りなどの記憶が優の中へ戻っていったのではないか。
それで優の頭の中に、優と光2人分の記憶、気持ち、感情の全てがごちゃ混ぜになった状態になってしまい、体が頭の容量に追いつかず、パニックになってしまったのではないか、と言われたらしい。
優はまだ、意識を取り戻していない。
いつ意識を取り戻すのかわからない。
そして、取り戻した後の優の精神状態がどうなっているか、誰にもわからない。
医者はかなりの確率で混乱し始め、暴れ出すのではないかと言っている。
…そりゃそうだろうな…。
……目覚めた後の優の気持ちが誰にもわかりゃしないのだって、優の過去の辛さを誰も理解することが出来なかったのだから、当たり前だ………。
………クソくらいだ…。
…何で俺には、優たちの気持ちをわかってやれないんだ…。
━━━━━━…俺は、優のことも光のことも好きだったんじゃないのか…?
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
78 / 162