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#86
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その流れ続ける涙に乗せられていくように、俺の心の声が漏れていった。
「………も、…か…?」
「…ん?何…?」
「………また……。……………会いに来てもいいですか……?」
…怖い。怖い怖い怖い。
また、傷付けて、苦しめてしまわないだろうか…。
また、俺は大事なものを自分の手で壊してしまわないだろうか…。
不安で仕方ない。
以前までは、どうすれば優たちにとって幸せな結果を導くことが出来るのか考えて行動出来ていたのに、今ではもうそれが出来なくなっている。
考えられない。
わからない。
だから、何も行動出来ない。
こんな自分が情けなくてムカつく。
………………こんなにも、優たちを救ってやりたいと思ってるのに…。
でも、こんな俺の不安な心を、優はたった一言で晴れさせた。
「……もちろんだよ…。」
優しく微笑んで俺に言ってくれる優。
さっきまでの不安そうな顔は全く見えなくなり、ただ純粋に喜んでいるような笑顔を見せた。
それでも俺はなお、まだ自分が信じられなくて何度も聞いてしまう。
「………でも。また俺…、お前のこと傷つけるかも……、苦しい思いさせるかもしんねぇよ…?」
「………。」
「……………また俺…。………………優のこと……!」
声も体も全身が震えた。
すると、優が俺の腕を掴んでいた手をゆっくりと下に下ろし、俺の掌に優の手が触れた。
そして、ゆっくりとその手に力を込めていく。
「…大丈夫だよ、俺は。」
そう言う優。
その優しさが胸に染みた。
「………優…、ごめんな…。」
「はははっ、何で謝んの?わけわかんねぇよ。」
すると、俺の謝罪を笑い飛ばした優が、あっ、と何かを思い出したかのように俺に聞いた。
「……………そういえばお前、名前は?」
……そっか、わかんないよな…。
……好きな人が、自分のことを忘れるのって、結構キツイんだな…。
「…たけ、ひろ…。………皆川………武博、っていうんだ…。」
俺はちいさく自分の名前を告げる。
「………武博、か…。……武博、武博…。」
優は俺の名前を覚えたいのか、何度も何度も俺の名前を呟いた。
そして、名前が頭に入ったのだろう。スッと手を伸ばして俺に握手を求めてきた。
そのときに、優は笑いながら言った。
「…武博か!いいな、武博って名前!俺、お前のこと気に入った!」
その言葉を聞いて、一気に体全身の力が抜けた。
突っ張っていた感情の糸もプツンと音を立てて切れ、俺の口から何度も謝罪の言葉が溢れた。
「…………………ごめん、ごめんな…、…ごめん…、ごめん……!」
掴まれていた腕を解放され、俺は腕で涙を何度も拭いながら、謝り続けた。
……本当に、ごめんな………………。
…俺、お前たちのことを助けたかったんだよ…。
ただそれだけだった。
それなのに、俺はバカだし、不器用だったから、お前たちを傷つけてしまった。
助けたい思いが強すぎて、相手にダメージを与えてしまった。
でも、これからは、絶対にそんなことはしない。
守りたいものを、必ず守る。
しなければいけないこと、しなくてもいいことをちゃんと理解しなくちゃいけない。
思い付いたことだけをやっていけばいいという訳ではないんだ。
ちゃんと、考えなきゃ。
それに、足元ばかりを見ていてはダメなんだ。
ちゃんと前を…、未来を見据えなきゃいけないんだ…。
…………優、光…。
…………………俺、もう絶対に間違わないよ…。
……絶対に、守ってみせるからな………………。
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