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#94
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「あ、これ1年のときの高校最初の大会のときの写真!」
「え、どれ!?」
「これ!…ははっ、俺髪短けー!」
「ほんとだ!俺はむしろこのとき髪長い!」
「あー、確か優って、この大会で髪が邪魔だって思って切ったんじゃなかったんだよ。」
「確かにこれじゃ髪が邪魔だな。…てか、お前らもう2、3年と一緒に試合に出たのかよ!」
「おうよ!サッカー部は先輩の数少なかったから、俺と優は大会に出られたんだよ。…俺も優もお互いのこと全然知らなかったけど、1年でこの大会に出たの俺らだけだったから、このときに仲良くなったんだよ。」
「…このときの試合、勝ったの?」
「もちろん!3対1で俺らが勝って、準決勝まで進んだけど、そこで負けて2位になったんだよ。」
写真を見始めると、話が1年の頃の内容になって大盛り上がりだった。
俺はサッカー部の活躍や普段のことをほとんど知らないから、この写真で優の1年のときのことが知れて嬉しかった。
写真を見る限り、1年のときの優はとても楽しそうにしている。
以前の香織さんから聞いた優の話とは逆の学校生活を送れているというのが見てとれた。
話によると、中学までの優はいつも暗くて、少食だったせいで細い体だったらしかった。
でも、この写真ではそんなことは一切見られない。
高校が優にとってとても過ごしやすい環境だったということだ。
だが逆に言えば、中学のときの優がいかに苦しんでいたのかが間接的に伝わってくる。
…もう2度と、そんな思いはさせたくない。
俺は隣に座って写真を楽しそうに見つめる優を見ながら強く思った。
「…にしても、写真多いな。」
「それな。ページにびっしりじゃん。このアルバム1冊で相当の写真が貼ってあるんじゃないか?」
「だろうな…めっちゃ重いもん。これがもう1冊あるぞ。」
「まだあんのか!?」
「あ、でもそれは高校のときじゃなくて、中学のときのやつだけどな。」
「え!見たい!!見よう!!」
優の提案に俺は思わず声をあげてしまった。
「いやいやいや、見なくていいだろ!」
「えー!俺見たい!このアルバム、武博ほとんど写ってないし。」
優が少しいじけたような顔で言うと、明良は本棚からもう1冊のアルバムを引っ張ってきた。
そのアルバムは、今見ていたアルバムよりも更にページが盛り上がっていて、かなり大量の写真が貼ってあるということを見せつけていた。
「うわ、やば!めっちゃ厚い!!」
「中学の3年間の写真だもんな!入学式から卒業式の写真まで全部あるぞ!」
「うわ、やだ!俺の中学のときの写真とか見たくねぇー!」
「ドンマイ、タケ。写真のほとんどにタケがいると思うぞ。」
それを聞いてよく見てみると、明良に出会う前の1年生のときの写真を抜かせば、明良の言うとおり、2年から3年のときの写真にはほとんど俺が写っていた。
俺は何だか恥ずかしくなって、目を反らしてしまった。
「はははっ!何これ、武博も明良も背ぇちっちゃ!」
「わ、笑うな!俺も武博も高校入ってから伸びたんだよ!」
「子供みたーい!!ははは!」
「まだ子供じゃ、ボケ!」
優には笑われっぱなしだったが、こんな風に自分の写っている写真を一気に見る機会なんてほとんどない。
俺も少し身を乗り出すようにしてアルバムを眺めた。
俺も明良も幼い笑顔で、優の言うように低身長。
新しい学ランもまだ少し大きいと感じられる。
この頃は俺も部活をやっていたし、今はいない仲の良かった友達とも一緒で、とても楽しかったのを覚えている。
……とても、懐かしかった……。
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