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#100 夢の中で
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夜、俺は酷く魘された。
見ていた夢が悪かったんだ。
怖くて怖くて仕方なくて、それでいてとても悲しくなって泣きたくなったんだ。
高2にもなった男子が、夢見が悪くて泣いて目が覚めるなんて、笑い者だと思ったが、そんなことはもうどうしようもないことで、俺は頭を抱えた。
……あんなことばかりを考えているから悪い夢を見てしまったのだ。
俺はベッドヘッドの明かりを点け、ぼんやりと天井を見つめた。
そして、あのときの優との…、いや、光との会話を思い出した。
━ 『………………何で、楽しい時間は早く過ぎるんだろうな…。』
━━『相対性理論ってやつだよな。…アインシュタインの。』
━ 『…前にテレビでやってるの見た。……本当に、時間が早くなったり遅くなったりするんだって。』
━━ 『聞いたことある気がする。未来、本当にタイムマシンが発明されるかもしれないってやつだろ?……そうなったらいいなぁ。』
━ 『…………もしタイムマシンがあったら、優はどこの時代に行く?』
━━ 『………武博と一緒にいて、時間が短く感じたその瞬間、…かな?』
━━ 『そうなったらいいな。…どんなに楽しくてもっと一緒にいたいって思ったりしても、タイムマシンがあったらまたその瞬間に戻ってもっかい最初っからにして、また武博とイチャイチャすんの。』
━ 『…でもなんかそれ、タイムマシンと違くね?(笑)』
━━ 『そうか?じゃあ、俺は時間が戻せる道具が欲しい!それか、時間が止められるやつ!』
━ 『ははは…!優、時間に欲張りすぎ!』
━━ 『そんなことない!誰だって思うはずだろ?』
━━ 『……それくらい、時間ってのは大事にしなきゃいけないってことだよ。』
……ガバッ
突然苦しくなって体が跳び跳ねた。
そして、溢れてくる涙と胸を握り締めた。
…何で、……何で、俺は……。
悔しくて悲しくて苦しくて、俺は孤独感に押し潰されそうだった。
あんなにも光は俺に、時間は大切にしなくちゃいけないって教えてくれていた。
あんなにも光は俺を、愛してくれていたのに…。
……どうして、お前は記憶をなくしたんだよ…ッ!
あんなに時間は大切にしなくちゃいけないって言ってたのに。
時間っていうのは、誰にだって戻せないものなんだよ!止められないものなんだよ!
それは、おまえが!
光が一番よくわかってたはずだろうが…!
時間は誰かのものなんかじゃない。
みんなの公平なもの。
だからこそ、時間は誰にも縛られずに進み続ける。
俺はそれに抗いたくて仕方ない。
戻りたい。戻りたい。戻りたい。
…あの頃に…。
まだ光のことを知らずに、何の疑いもなく、自分の好きな人のことをただひたすらに好きだと感じられていた頃に。
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