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#112
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いつの間にか、俺たちの形勢は逆転していた。
でも、俺は明良にされたようなことはしていない。
子供のようにボロボロと涙を溢しながら、それでも言っていることはただの子供のわがままではない明良を俺が慰めるという状況。
それでも、俺は泣いている明良の涙を止めることをしてあげられそうになかった。
ただひたすら、明良の隣で声を掛けることしか出来なかった。
「……明良………。」
明良の叫びを聞いて、初めて明良の本音を聞いた気がした。
明良があんなことを思っているなんて知らなかった。
ましてや、明良が本気で俺のことを見ていてくれていたとは、微塵も思っていなかった。
「………明良。…ありがとう……。」
素直に、心に浮かんだ言葉を言ったつもりだった。
でも、明良にはその言葉が許せないようだった。
「…何でッ、何でありがとうなんて言うんだよ…!……俺、お前のこと縛って、お前の嫌がることしてたんだぞ!?…なのに、なんで感謝されなきゃいけねぇんだよ!」
明良の目は、真っ赤だった。
それを見て、俺は縛られた自分の手首を明良に差し出して頼んだ。
「……明良、これ、取って。」
頼むと、明良は何も言わずにあっさりと結ばれたマフラーを取ってくれた。
自由になった手で、乱れたズボンを履き直し、そっと明良の背に回った。
そして、まだ僅かに震える手で明良を後ろから抱き締めた。
「……はぁッ?…タケ、どういうつもりなの…?」
「………………。」
「……ねぇ、聞いてんの…?」
「……………。」
「………返事、しろよ……。……何なんだよ、マジで…。」
「…………。」
「なぁ、タケッ!何とか言えよ!…じゃねぇと、また、…お前のこと…ッ!」
「━━━━━━━━━━…泣かないで……。」
俺の腕を掴んで怒鳴っている明良。
でも、顔は見えない。俺が明良の後ろにいるから。
…俺が明良の後ろに回ってこうしている理由。
それは、もう誰かの泣く姿を見たくなかったから。
逃げているのはわかっている。
自分が人の涙を怖がって見たくないって思っているだけだということは、わかっていた。
でも、それでも俺は明良を泣かせたくなかった。
…俺の大好きな明良が、俺が原因で泣いてしまっている姿なんて、見ていられなかったから。
震える俺の腕に、大粒の涙が何度も零れ落ちていた。
俺はそんな涙を流すこいつを、強く抱き締めた。
…明良、ありがとう……。
………俺も、大好きだよ…。
…………………でも………。………ごめんな……。
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