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#116
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あの後、俺と明良は今度こそ完全に涙を拭き、帰る支度をして部室を出た。
廊下から見る外の景色は、もう真っ暗だった。
日は完全に沈み、時計を見ると6時をとっくに過ぎていた。
この時期の6時過ぎは夏の夜中当然の暗さ。
俺たちは少し早足で校内を歩いた。
会話はというと、少し躊躇いながらも今日の俺と優の話をしていた。
いろいろ明良にしたりされたりで、ちゃんと優とのことを話していなかったと思う。
一通り、今日あったことを明良に話した。
「……ふぅーん…。…それで、俺んとこ来たのか。」
「…うん…。…こういうとき、頼れるのはもう明良しかいないし。」
「まぁ、優の二重人格のこと知ってるのは、俺らだけだもんな。……んで、優に本音をつかれて何も言えなくなった、と。」
「……ん。…俺、今日は俺と優の2人きりだったから、今日は優じゃなくて、光の持ってた記憶を戻してやりたかったんだ…。…それで、そのケーキ屋に行って、2人で話したりして…。」
「………でも、優にはそれが、タケが自分と他の人とを勘違いしていると思った……。」
「…そう。……優には想像もつかないような他人のことを話されてるって感じたってことだろ?…だから俺…。……優と光って、どっちが本当の優で、俺はどっちを好きになったんだろうとか、俺は今誰と話してるんだろうとか、そんなことばっかり考えちゃうんだ…!………自信がなくなってくんだ…。」
思わず声が徐々に小さくなっていき、それは明良の苛立ちを掻き立てるようだった。
「…だぁかぁらぁー!弱音ばっか言ってると、今度こそマジでヤるぞ!?」
「…!ち、ちょちょっ!冗談でもそういうことをでっけぇ声で言うんじゃねぇよ…!」
「タケが弱音ばっか言ってるからだろーが。」
「…だって……。…じゃあ、俺はどうすればいい?」
「は?」
「…俺、きっと…、ていうか絶対、優のこと傷付けてる…!」
「……まぁ、今日お前が優のこと置いてきたのは、さすがに傷付いただろうな。」
「それはわかってる!……でも、それ以外に…。…どうやったら、傷付けないで守れるんだ……。」
締め付けるような痛みのする胸を押さえながら呟く。
すると、俺の少し前を歩いていた明良がピタリと立ち止まった。
そして、くるりと振り返って真剣な眼差しで俺を見つめてきた。
「……タケ…。……マジでそんなこと思ってんの…?」
「………ぇ、…ぁ…。……うん…。」
明良の言葉に、自分で自分の気持ちに自信が持てず、上手く言葉を返せなかった。
……滅多に見せない明良の真剣な瞳のせいだ…。
この瞳に捉えられると、俺は蛇に睨まれた蛙の如く、体の動きが止まってしまう。
「………………何言ってんの…?……まだわかんないの…?………………そんなこと、絶対に、不可能なんだよ…?」
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