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蒼の章4
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ギー…
椅子が床を引き摺る音に小さくドキリとして俺はテレビから視線を移し音の方向を向いた。
店の奥のテーブルに一人で座っていた学生が食事を終えて立ったところだった。最近の若い奴は背が高くていいなと羨望の眼差しを向けた。緩くウエーブした黒髪に黒縁眼鏡の青年は如何にも頭が良さそうで、出口に向かい歩き出しどんどん自分へと近づくその顔はハッとする程整っていた。
青年と目が合うと不躾に眺めていた事がいたたまれなくなり再びテレビに視線を移そうとしたのだが、それを遮るようにして青年が俺の前に立ちはだかった。辛そうな表情で一度開きかけた唇を閉じて数秒伝えるべき言葉を探しているように沈黙した。
そして俺に顔を寄せ耳元で一言、
「…追うな、死ぬぞ。」
そう言った。
俺はというと意味が理解出来ずにポカーンとして青年が立ち去ったあとも青年がいた場所を暫し眺めた。
ハッとして振り返るが彼はもう店にはおらず、町の雑踏に消えていた。
正気に戻るにつれ、さっきのはどういう意味だと頭が回り出す。不躾に眺めたせいか?何見てんだよ、追って来んなよこの変態!殺すぞ、という事だろうか?そう思うと腹がたってきたが、実際のところその真意はわからなかった。
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