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蒼の章14
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「カズ、まぁ座れよ。そうだ、食いたいもん何でも頼んでいいからな。」
「うん!」
2人並んでカウンターに座り、いつの間にか出てきたオヤジにカズは俺と同じ冷やし中華を注文した。待っている間、カズは始終嬉しそうで、帰ってくるって信じてたと言ってニコニコしている。
そんなカズに挫折して帰ってきたとは言いにくく、昔の俺を覚えていて欲しくて影を払った。
でも、良かった。健康そうだし、明るくなった。
カズの視線がふとテレビに向くと、つられて俺も視線を向ける。まだ、物騒なニュースが流れていた。嫌な気持ちがぶり返しそうで、俺敢えて手許の冷やし中華に視線を向けると、カズも前ならえでそれに続いた。
「にぃちゃんが別れた時プレゼントしてくれた時計、大事に持ってるよ。覚えてる?魔法の時計。」
「カズは昔からモノを大切にしてたもんな?…今はどうしてる?大丈夫か?」
カズに時計をあげた事なんてすっかり忘れていて、どんな物をプレゼントしたか言えず形状を表現する事は避けた。多分、当時カズが好きだったヒーロー物の子供向けの変身ウォッチあたりだろう。俺はそんな事より、カズが今どうしてるのか聞きたかった。
「五年生の頃から施設にいるんだ。18歳までしかいられないけど高校までは国が面倒みてくれるって。おばちゃんがずっと助けてくれた。にぃちゃんの服のお下がりを貰ってるよ。今もね。新しい服も買って貰ったけど、にぃちゃんの服がいいんだ。にぃちゃんがそばにいてくれる気がして。」
俺は胸を締め付けられる思いでカズの頭をくしゃりと撫でた。嬉しそうに首を竦めるカズを見ながら心が痛んだ。
俺は最初こそカズを気にかけていたが、三年も経つと徐々に生活に流されて忘れてしまっていた。
今度は忘れないぞ、と心に決める。
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