アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
玄の章3
-
金属を通すと霊が見えにくくなる、そんな逸話を信じている訳じゃない。だけど、プラスチックでは無くガラスのレンズの伊達眼鏡をかける。
それ自体に効果は無いが、眼鏡をかける事で自分なりにスイッチを切替し、ある程度見えなくするようコントロール出来るようになった。
大概の霊は怖くない。
幽体となり、自分の遺体とそれにしがみついて泣く家族を眺める。自分の葬式に出る。悲しみ続ける家族を見る。
初めこそショックを受けるがやがて自分の死を受け入れ輪廻の輪に戻って行く。
恐ろしいのは何時までも死を自覚していない霊や、苦しい、辛い、憎い、悲しい、恐ろしいと言った強い負の感情を残す霊だ。生霊なとなどもタチが悪い。そういった霊は時が経つにつれて念に変化して行く。
そうなったら昇華させ、輪廻の輪に戻すのは難しい。
足音は目の前で止まった。目蓋を開くと、目の前に柳井教授が立っている。
「雨宮君、生きたまえ。そして、生を謳歌したまえ。君の能力は個性のひとつに過ぎんのだ。この世界が始まった時から変わらない。命あるものに生まれてきた以上、そこにあるのは生と死だ。死ばかりに目を向けてはならない、いいね?君は生者だ。」
優しい、優しい目だ。
彼を構成する色彩が急に薄れる。今日の授業は終わりというサイン。柳井教授が完全に消えてしまう前に立ち上がり
一礼する。
古い講堂に鳴らないはずのチャイムが鳴った。
もうほかの学生は帰った筈と荷物をとりに戻る。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
19 / 159