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玄の章4
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旧講堂を後にして、足早に本来の学舎にもどる。
人影は殆ど無かったのにホッとしていたらロッカーの前に女子が数人たむろし声高にファッションについて話している。
何がそんなに楽しいのか理解出来ないと思いつつ、群れる女が苦手な雨宮は遠巻きに自分のロッカーへ向かおうとした。群れる女子がそんな雨宮に気付くと、仕込まれた動きの様に一斉に雨宮の行手を阻み四方を囲まれてしまいギョッとする。
「あーきたぁ!遅っ!」
「雨宮君さ、今日これから暇?」
「懇親会企画したから来なよ?」
「てか、来なきゃダメだから!はい、決まりっ!行こ!」
ヤバい、そう思った時には遅かった。それぞれ勝手なことをまくし立てながら迫る女子に、肩や腕や手に触れられて頭がスパークする。途端複数の人間の思考が雨宮の頭に雪崩れ込んで来て眩暈を起こす。
「ッ!」
一見派手そうなギャル風の滝川サキは雨宮を友人として含めた楽しい飲み会をそのまま想像していた。
お嬢様系の高瀬あやは飲み会の途中で雨宮と二人抜けがけしようと計画している。
真面目な眼鏡女子の北島絵里子は案外肉食系で、個人的な好意と呼ぶにはエスカレートしたその先の赤裸々なセックスシーンの妄想をぶつけてきた。
いつも清楚なイメージの早川カイリは雨宮を監禁して飼いたいなどという危険思考を持っていた。驚いている間に彼女の妄想の波にのまれ深い場所に入ってしまった。
見たく無いのに、彼女の精神世界の一端を垣間見る。
彼女の脳裏にはアイドルと迄はいかないが可愛い感じや顔の整った、下は中学生くらいから上は大学生くらいの具体的な男の子のイメージが数人浮かんでいた。現実にいるのだろう。
彼等を物陰から眺め、尾行したり、プライベートを盗撮したりと完全なるストーキング行為を行い、彼女の妄想は昏い愉悦に満たされていた。今は実行に移していないが、ゆくゆくは誘拐、監禁の衝動を抑えられなくなるかもしれない。その中に自分も含まれると思うと吐きそうだった。
(気分が悪い…….!)
咄嗟の事で深く考えられずに、拒絶反応から雨宮は早川カイリの手をきつく打ち払った。
彼女に触れられた場所が穢れた気がした。
自分の容姿が目立つ事は理解していたが、男女の区別なく沢山の人から度々恋愛対象や性的対象にされるのは迷惑だった。人のあからさまな欲望をぶつけられるのは雨宮にとって公然と痴漢されているのと同じだし、頭の中を覗いてしまう側としても、他人の自慰を見ているようで果てしなく気まずい。雨宮が人を避けるのは、こういう理由からだった。また、稀に深く心に潜り見てしまうと見られている事を感知する者もいる。
「…え?ひどーい……!」
非難の声が上がる中、具合が悪いからとその場を離れ、ロッカーに収まっていた荷物を持って雨宮は家路へと急いだ。一瞬見えた早川カイリの怒りの形相が恐ろしかった。
それが内面の心象だったのか、実際に見た顔だったのか、自分の思い込みだったのかは定かではなかったが。
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