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玄の章7
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想いを強く遺した霊は現世に縛られる。
縛られている霊は悲惨だ。
死んだ自覚の無い霊も。
自殺して本当に楽になれた者はいい。
想いを残していないから転生出来るかも知れない。
例えば、末期癌で生きる事が苦しいだけになった者。
苦しみから解放される為、納得済で死を選んだのなら未練は無い。苦しむ本人もそれを見る家族も救われる。
けれど、自殺する者は、現世で上手くいかない己を呪って死ぬ者が多い。または鬱状態で死を選んだ者。
前者の未練は余りにも多く、後者は心が病んだままだから死を正しく受け入れているか不明瞭だ。
同じように、薬物で死んだ者、誰かに殺された者、火事や溺死など苦しい死に方をした者…
総じて、現世に縛られる事になる。
その場所自体、または物品に縛られる事もあり、殺された者ならば殺人者を呪い憑いて回る場合もある。呪うほど強い想いがあるならまだ意識や目的と呼べる物があるから話が出来る事もある為、雨宮はマシな方と考える。
だが、自殺者は少し違う。
例えば、飛び降りなどで自殺した者の多くは、自分が飛び降りた同時刻に永遠に飛び降り続ける。
実際はもう死んでいるのに、自覚が無い為何度も生命を絶とうと繰り返すのだ。
そして、現世に霊体で存在し続けるには魂の根源である霊気を使う。電池のように自然放電して徐々に存在が薄れる。力が弱まるのを感じると霊は生者から霊気を奪い補給するようになる。人間が食べ物を得るのと同じだ。
とはいえ、生きている者なら誰でもいいという訳でも無い。
自分と同じような悩みを持った者、同じような思考の者、あるいは心身共に疲れ切っている者…。
自分と波長が近い者を捉えて引き寄せる。震源に近ければ受ける被害も大きいように、強い霊の近くにそんな生者がいれば強く影響を受けてしまう。
自殺の名所などは、その良い例だ。
生者に憑依して糧を得ると共に、自分のすべきこと、まだ、成し遂げていないと思い込んでいる仕事、つまりは
…自殺をするのだ。
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