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玄の章8
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元凶となる霊に引き寄せられて新たに死んでしまった者はその霊体の一部と化す。
その意識は強い霊に引きずられてしまうから単独で昇華されることはまず無い。強い霊は《場》を侵食し、マイナスの力を溜め込む。マイナスの《場》には、気掛かりな事がある為に昇華出来ずにいるが生者を襲う考えが無く、ただただ弱りはじめた執着の薄い霊体なども引き寄せて取り込んで行く。更に強くなった霊はまた新たな生者をより強い力で呼び寄せる。こうして一つの強い霊体を核に巨大な霊の集合体となったものを《霊団》と雨宮は呼んでいる。
心霊スポットや、自殺の名所に遊び半分で肝試しになど行ってはいけないと言うのは間違っていないのだ。
負の遺産を受け継ぎ、気付いた時には亡者に誘われ死んでしまっうかもしれない。
霊以外にも気をつけなくてはいけないのが神霊の存在だ。
神には良き神ばかりではなく荒ぶる神もいる。
…祟り神だ。
日本には八百万(やおよろず)の神がいるという。
我々日本人は古来より祟り神も祀る民族だ。
どうか、貴方を祀るから我々に禍を向けて下さるな、貴方を祀るからその力で守って下さいよ、という道理だ。
近所の祭神や、道祖神、結界神、道端や空き地の崩れかけた祠に祀られているもの、…それらの正体が何なのか知らないのは恐ろしい。
祭り事がイベントと化し、本来の意味が失われつつある現代、鳥居の向こうの何かが目覚めて、不幸を振り撒いてもおかしくはない。鳥居は本来、人間界と神域を分かつ結界の様な物なのだ。
危険な神域を知らずに冒していないか、考えなくてはならない。
雨宮はテーブルから上体を起こした。
姿を現さない家族を恨んだ事もあった。だが、成長するにつれて良かったのだと思えるようになった。
家族が生命を落とした事故現場付近には何度も赴いたが、特に強い霊は居なかったし、魂が凍りつく様な祟り神の存在も無かった。
だとしたら、家族は皆無事に輪廻の輪に戻る事が出来たのだ。
どこかで自分を見つめていてくれるのかもしれないし、既にこの世に転生していて、自分が生きている間に何処かで出会えるかもしれない。
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