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玄の章9
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「もう一度……」
もう一度だけ逢いたかった、そう言いそうになり口を噤んだ。生きている者のそういった想いが死者の 昇華を阻害する事がある。言葉は言霊、良い言霊は良きものを呼び、悪い言霊は悪しきものを呼ぶ。
家族の足枷にだけはなりたくない。
時には孤独が沁みて愚痴りたくなりポロリと溢れる事もあるが一応呼び寄せる様な言葉は発していないつもりだ。
集中がとぎれて声がしなくなる。
こんな幸せな《レコード》のある家に産まれたのだから自分は幸せだったのだ。
立ち上がろうとして、椅子を引くとテレビが目に入って来た。良く姉とチャンネル争いをしたものだとクスリと笑う。
そしてふと気付いた。
リビングのテレビはアナログで、スイッチを入れてももう映りはしないのだと。
あれから長い長い時間が過ぎたのに、この家の時は止まったまま。
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