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玄の章10
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自分が生き迷っているのは分かっていた。
過ぎてしまった時間は戻せないが、過去は不変だ。
幸せな時は幸せなまま。
雨宮の心は過去に向いている。
母親は何時でも無償の愛を伝えて来たし、父親の大きな手は安心感をくれた。姉は楽しい事を探す術を教えてくれた。雨宮の家族はある日突然この世から消えたが、過去は雨宮を裏切らない。
と。
アナログテレビの電源がつき、モニターが砂嵐になった。
雨宮は驚いて顔をあげた。
やがて砂嵐の中でかろうじて聞き取れる音声と共に人間らしき影が中央にあった。
一瞬カラー画像が差し込まれた。
見た事がある。
地方局の情報番組だ。
「誰?父さん?母さん?ねーちゃん?」
雨宮はハッとして声をかけ部屋の中を見回したが、テレビ以外何の変化もない。諦めてテレビに集中する。
テレビから雑音混じりのニュースが流れ始めた。
《…残念なニュー…す。oo町で昨夜……土木業を営む男性から警察に通報……り、資…置場として………いる場所から6匹の……死骸が発見……ました。警察では同一犯の犯行と……犯人の行方を………ます。兎、猫、犬と続いて動物を虐待……犯人。周辺住民は眠………日々を過ごして…ます。現場から………繋がっています………さん?》
雨宮は画像に目を凝らして、内容をなんとか読み取る。
やがて、最近この辺りを騒がしてるニュースだと気付いた。ニュースが終わるとプツリと電源が切れる。
家はまた静寂に包まれた。
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