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玄の章13
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こいつが。
こいつが犯人なのか?
一時疑ったが、背後の動物霊達はどうやらこの男に怨みの念を持っていないようだ。
だとしたら、残るは因果。
何の縁があって、殺された動物達とこの男が繋がるのか。
なんにせよ、この男に命の危険が迫っている事は間違い無かった。
ちょうどその時、ニュースが始まった。
朝に聞いた内容が繰り返される。
兎の死体が見晴らし山で見つかったのだ。
黒い靄の男がニュースに集中している。
背後の動物霊達が活発に蠢く。
ニュースが終わる頃、男の頭を覆う黒い靄が少し濃くなった気がした。いや、気のせいじゃない、濃くなっている。
僅かにずれた眼鏡を中指で正位置まで戻す。
どういう事だろう。この男は実は病気で、この一瞬に致命的な病の進行がおこったのか…。だが、動物霊は彼に悪さをしていない。
だとしたらニュースだ。
ニュースを見て黒くなったとしか考えられない。
もし彼が犯人だとしたら、狂人の様に自分の諸行がテレビで広く報道されて満足するのかもしれない。
だが、彼にそういった素振りは全く無い。
ニュースを見て濃くなったのなら、彼はこの事件に関心を持つことで何らかの行動を起こして、やがて死んでしまうのではないか、と考え至る。
例えば、知らずに犯人と関わるといったことで。
雨宮の家の映らない筈のテレビに起こった現象は、この男をどうにかして助けろと言っていたのだろうか。
(相手にどう声をかける……)
いざ、助けようという段になって、何をどう伝えれば相手が雨宮の言葉を信じてくれるのかと困惑する。
変な宗教と思われても嫌だったし、そもそもメッセージ自体、彼を助けろという解釈で合っているかどうかも分からない。
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