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玄の章14
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嫌な思い出が蘇る。
中学の時、風邪で休んでいたクラスメイトの家にノートを届ける役目を押し付けられ、渋々家を訪れた。
クラスメイトの家は二階建ての一軒家で、戸惑いながら門扉に備え付けらたインターホンを押し要件を伝え暫し待つと、玄関からクラスメイトの母親が出てきた。
その母親の顔が黒い靄につつまれていたのだ。
どんな顔か判別出来ないほど真っ黒だった。
結婚式の帰り事故に遭い、帰って来なかった自分の家族と同じ。
ゴクンと唾を飲む。
「わざわざありがとうね、雨宮君!遠かったでしょう?」
「いえ……これ、ノートです。あの、おばさん、事故に気を付けてください。」
ノートを手渡すついでに躊躇いがちに声を掛けた。
声は明るく覇気もあり、肌の色も健康的だから病気では無いと判断し、残すところは事故だけだった。
言ってしまってから、どう思われたか心配になった。
頭がおかしいと思われたかも。
そう思うといてもたってもいられなくなりぺこりと頭を下げて走り去った。
次の日。
休んでいたクラスメイトが登校して来た。
こちらを見て、ひそひそ話しているのが見える。昨日の事だと察して辛くなり逃げるように廊下に出ると、その生徒が後を追ってきた。
「雨宮、お前なんなの?自分の家族が死んだからって俺ん家に嫌がらせか?お前、マジないわ。」
肩を強く押されて背後の壁に背中を強打する。
「…違う!そんなんじゃない!俺みたいな思いをして欲しくないから言ったんだ。…俺は教えたからな!」
嫌がらせと言われてカッと来た。
同時に深く傷つく。気持が昂ぶりこいつの家族などどうなっても知らないという気持ちに流されその場を離れた。
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