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玄の章17
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クラスメイトはそれからひと月来なかった。
雨宮はテレビで事故の詳細を知った。
普段はそんな事をしないのだが、責任感から報道された事故現場を訪れた。
現場には、運転していた若い女の想念が強く転写されたレコードが残されていて事の顛末を彼女の目線で知る。
酷い事故だった。
飲酒や薬物、携帯機器を使用しながらの運転。
何故駄目なのか、答えは単純なのに自己抑制のきかない加害者予備軍は増えている。
人を殺してしまったら、人生は終わる。
どんな顔をして被害者の葬式に出るのか。
どんな顔をして被害者家族に会うのか。
どうやって償って行くのか。
それが想像出来ないのだ。
事故現場には沢山の花が手向けられていた。
そして、そこにおばさんがいた。
身体の中心が潰れ厚みを無くした血塗れの肉塊の様な姿。その目に雨宮は写っていない。
話す事は出来なかった。
おばさんの足元には若い女の子の霊。
左手に罪の象徴であるスマホを持ったまま、ごめんなさいを繰り返している。
加害者は自分の仕出かした事に耐えられず、近々取り壊しになるビルから飛び降り命を終えた。
その魂はビルの下ではなくここにいて、永遠に謝罪を続けている。だが、悲しい事に両者は噛み合っていない。
自分が上手く立ち回れなかったから、おばさんは死んだ。
自分がおばさんを助けられなかったから、加害者も死んだ。2人の人間が死んだその事実は雨宮の心に深い影を落とした。
その後、学校に変な噂が流れた。
雨宮が呪いをかけ人を殺すというものだ。
雨宮は反論する気にもなれなかった。
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