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玄の章18
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もう、同じ轍を踏むわけにはいかない。
どう言えば気にして貰える?
どう言えば不吉さが伝わる?
死期はもう少し先だが、どうにか彼に危険を知らせたい。
雨宮は存在を誇示する様に椅子を鳴らして立つ。
動物達に関連して彼が命を落とすらしい事だけは分かっていた。
子兎から猫になり、メッセージの通りこれから犬が殺されるのだとしたら、犯人の標的が大きくなっている事になる。
次は人間が襲われ…その犠牲者が彼だったら…。
どちらにせよ、彼の傍で定期的に色を観察し見守るしかないだろう。それに、彼はやや勘の鋭いタイプに見えた。
ニュースに釘付けになっている様子が、一般人のそれとは微妙に違ってみえる。
漠然と死期を悟っているのかもしれなかった。
意を決して彼に近付くと視線が絡み合った。
なんて言う?
彼が気まずい様子で視線を外したが、それを阻むように移動し注意を引きつける。貴方はもうすぐ死ぬ、言おうとしてこれじゃたちの悪い悪戯のように思われて終わりだと口を閉ざした。行動を変えるには本人に考えさせなければならない。
多少の謎が必要だ。
顔を相手の耳元に近付ける。
そして。
『…追うな、死ぬぞ。』
雨宮がその場で絞り出したのはこの一言だけだった。
何を追ってはいけないのかは言わない。
そして、相手が混乱している間に、彼の手に指先で触れた。
動揺している間は心はノーガードだ。
彼の住んでいる地区、彼の体験した印象深い事柄などが流れてくる。雨宮は彼が正気に戻らぬうちに立ち去った。
必要な情報は既に雨宮の中にある。
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