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灰赤の章1
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ジージージージージー・・・・
プチッチッ…チッ…
……、…き、…あき、
明希?何をしてるの?
……明希?!
自分を覗き込む母親の顔。
俺の両肩を掴んで支えるようにしながら立たせる
少し怯えたような、そして哀しそうな顔。
「……母さん」
俺は庭にいた。
手には枝。
母はそれをもぎ取るようにして取り上げると遠くに投げた。
駄目、そんな事しないで。お願いよ明希。
何のことかわからない。
子供の頃から俺は記憶が曖昧で、いつも混乱している。
少し考えて、先程と同じようにしゃがんだ。
そして理由が分かった。
足元の蟻が延々潰されている。
ここでずっと蟻を殺していたらしい。
母親の戸惑いの原因はこれだったようだ。
「……母さん、ごめん」
謝るが、どうしてそうしたのかわからないし、何の感情も湧いてこない。
蟻が死んだからといってどうしたというのだろう。
世界は何も変わらない。
俺は感情が稀薄らしい。
嬉しいも、楽しいも、悔しいも、怖いも、誰かを好きだという感情も僅かにしか感じない。
…だけど、知能に問題がある訳では無い。
何もなければ、普通に生活出来る。
ただ、いつも頭の中は白い霧に包まれており、自分というものが本当に存在しているのかわからない。
その上、おかしなものが時折頭を占領する。そうなると、俺の記憶として蓄積出来ない空白の時間が生まれる。
俺は四十九院明希(つるしいんあき)
初見でこの苗字を読めた人はいないし、実際へんな名字だ。
三ヶ月前に東京からここに来た。
これから、カウンセラーの所に行く。
行きたくは無い。
どうせ、誰も治せないから。
それに、あそこは嫌いだ。
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