アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
灰赤の章6
-
「…コーヒーが入ったわ、起きて四十九院さん。」
合図だ。意識が浮上する。
着衣の乱れは無くなっていた。
毒々しいまでの交わりの名残が何処にもない。
本当にカウンセラーとセックスしたのかどうかもあやふやだ。
ただ、終えると不快感が残った。
証明するのは不快感だけ。
頭はまた白い霧に包まれ始める。
カウンセラーの入れたコーヒーを飲む。
何か変わったのだろうか。
自分にはわからない。
苦い。半分程飲んでコーヒーを置く。
暫くしてチャイムが鳴った。
「お母さん、ね。一人で玄関まで行けるわね四十九院さん。…それじゃ来週の水曜日に。」
「はい。」
患者が帰って行くその背中を見送る。
彼の母親はいつも心労を貼り付けた様な顔をしている。
そう、貼り付けた様な。
でも、見て。
ほら、今、口元に笑み。
彼女は幸せ。
心理学的に言えば、母親にとって息子は恋人。
母親にも色々なタイプがいるけれど、彼女は典型的。
本当ならもう手を離れている年頃の若い男を手元に置いておける。
彼女の家庭は中流階級から上流階級。
夫の社会的地位は高いだろう。
彼女の世界は結婚前より窮屈で、夫は家庭より仕事に目が行く人間。
息子が産まれた時点で、彼女の中の夫と息子の順位は逆転したでしょう。
手の掛かる息子だが、彼女は嬉しい。
不具合を理由に若くてハンサムな息子をずっと側に置けるでしょうから。
利己的な支配欲。
世界から嫁姑問題が消える事は無い。
息子の恋人や嫁は母親にとって最大の敵でありライバル。
これだから、女は素晴らしい。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
41 / 159