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灰赤の章7
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四十九院が帰った30分後。
黒のアンティークのダイヤル式の電話が鳴る。
次は彼女だ。
この患者のセラピーは電話。
電話でしかでしか話さない。
患者は選べる。
この屋敷で対面して話をするか、
メールかチャットで話をするか、
電話で話すか。
私に辿り着く為の窓は開いているけれど、私が治療するのはこの街に住んでいる人間に限定している。
四十九院君の一家はわざわざ治療を受ける為に引っ越して来た。
「アリスね」
《そう》
「時間通りね。この一週間の出来事を聞かせてくれるかしら」
《あまり変わらないわ。いつも通り、小鳥たちの世話をしていたの》
「貴女の小鳥達の様子はどう?」
《元気にしてるわ。今は放し飼いにしてるの。》
「アリス、貴女のお気に入りの小鳥の話をしてくれる?」
《お気に入り、ええと…かわいい雛がいてね。元気なんだけど、親鳥がいないから栄養状態が良くないの。近いうち保護してあげなくちゃ駄目ね。》
「アリス、貴女の部屋で育てる気なのね」
《でもね、本命は別。特別な鳥がいるのよ。なかなか懐かなくて…野生の鳥だから。でも宝石みたいに綺麗な鳥なの。雛じゃないから大変だとは思うけど、その子は大切に、大切に籠で育てるの。》
「では、アリス。その小鳥を手に入れたら教えて頂戴。貴女の自慢の小鳥の事、知りたいわ。それに、貴女にもいつか会いたいわね。甘いお菓子を用意してお茶会をしましょう。」
《お茶会、いいかも。じゃあまたねセンセ》
「ええ、さようならアリス。」
…アリス。20歳前後の若い女。
アリスというよりはハートの女王様。
小鳥を手に入れたら、貴女犯罪者なのじゃないかしら。
小鳥を手に入れたら、ねぇアリス、籠に閉じ込めるだけじゃ貴女気が済まない。
きっと殺してしまう。
そうでしょう?アリス。
兎を追って、不思議の国に来て、其の先が貴女に見えているのかしら?
カウンセラーは嗤った。
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