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灰赤の章11
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レトロな喫茶店の窓際の席に座って、アイスコーヒーが届くまでの間、スマホを取り出し地図アプリで周辺の様子を調べる事にした。川を捜す。画面をタップし現在地を指先で広げて拡大する。東の方角に川があった。
ここから10分もかからないだろう。
やがてアイスコーヒーが届き、ストローをマドラー代わりにカラコロと浮かぶ氷をかき混ぜてから、冷たい液体を飲み込む。
いきなり犯人とご対面となるような危機的予知も起こらない。大丈夫、心配ない。
言い聞かせて地図を閉じる。
でも本当は、こんなにはっきりと啓示めいた接触を受けた事は無かったから正直緊張感が拭えない。
今までは、雨宮があちらの世界を覗いていた。
けれど、今回はあちら側が、テレビを動かすなどして接触してきた。それに、テレビで放映されているような未解決の大きな事件を解き明かそうなんてした事はなく、これが自分にとって何らかの大きな転機になりそうだという予感だけはしている。
実際は、どんな力が働いて雨宮を動かしているのかわかっていない。雨宮が勝手に希望的観測で家族のメッセージではないかと思い込んで行動に移しただけだ。
それを成し遂げたら、姿を現してくれたりするんじゃないかと淡い期待がある。
家族と死に別れた後祖父母と暮らしたが、祖母が入院した時亭主関白だった祖父だけでは雨宮の面倒を見れなかった。母の妹夫婦に一年預けられたのだが、その一年は雨宮にとって最悪の年となった。
叔母からは嫌々雨宮を引き取ったという内なる声が溢れていたし、幼い頃お金に苦労したせいか、雨宮の家の資産がどうにか手に入らないかと常に考え、美しかった姉に対する嫉妬が今も尚渦巻いていた。
最初の数日は優しげな笑顔もくれたが、雨宮が大学を卒業するまで資産は凍結されるという両親が生前に書いた遺言書が弁護士に預けられていると知ると態度は一変した。
あからさまに風当たりは強くなり、雨宮は家政婦のように働かされた。妹夫婦には従兄弟である悟と隆がいたが、彼等も母親の扱いを真似て事あるごとに雨宮を虐めた。
子供だった雨宮は、ここで人間の汚さや人間の欲や闇を覚えて、大人になるしかなかったのだ。
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