アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
灰赤の章12
-
雨宮は成長し、自分で責任をとれる年齢になった。
欲しいものは自分で手に入れられるし、自分で何でも判断できる。
それなのに、身体の成長に反比例したみたいに、今頃になって小さかった雨宮が時折暴れ出すのだ。
今も。
「…川に行きたくない。怖い。」
雨宮はびっくりして口を押さえた。
周囲を見回す。数人いる客は誰も気付いていない。
俺はアイスコーヒーの料金を払って店を出るんだ。
そう思い、立ち上がろうとしても椅子に根が生えたみたいに身体が動かなかった。
雨宮は今、自分をコントロール出来ずにいる。
これは、自分がストレスを溜め込んだり緊張が高まった時にガス抜きをする様に発現する事が多い。
こうなった時の対処法は一つだけ。
答えが出るまで自問自答する。
川に行きたくない
何故?
犯人と会うと怖いから
何故?
犯人をコントロールできないかもしれないから
何故?
霊体や普通の人間なら精神に向けて多少攻撃できるけど、心が普通の構造でない場合は上手く出来ないかもしれないから
何故?
襲われるかもしれないからこわい
何故?
誰も助けてくれないから
何故?
…俺は一人だから
鼻にツンとした感覚があって、涙腺が緩んだ。
涼しげな貌に涙が一筋流れた。そっと手の甲で拭う。
知っている。そんな事知っている。
わざわざ抉って再確認する事はない。
酷い自虐だ。ともあれ、小さな雨宮は納得したのか何処かへ行き、椅子から立ち上がる事が出来た。
誰のため?
わからない。孤独を紛らわす為かもしれない。
一人だと思いたく無いだけかもしれない。
本当は恐ろしくても、雨宮は行くしかない。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
46 / 159