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灰赤の章13
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思いの外喫茶店で時間を過ごしたらしい。
太陽は傾きかけて、もう夕暮れだ。
水に削られて丸くなった河原の石を踏んで進む。
山があり、川がゆったりと流れて水音は心地良い。
少し歩いて、男とあの青年の出会った場所を探してみたが、何処も似た様な風景で諦めた。
さっきまで、この場所を恐れていた。
実際に来てみれば、自然溢れる景観のよい場所だ。
鳥や虫が飛び交い、足元には花が咲いている。
店先にある様な交配されて出来た鑑賞用の花ではなく、小さな白い花が幾つか控えめに咲く可憐な様子の花。
雨宮はしゃがみこんでそこに座り込んだ。
風景を眺める。
蝉が一斉に鳴いて巡り合うべき恋人を呼ぶ。
地上に出て1週間だけの命と恋。
この大音響も解る。
彼等の命そのものだ。
つい、気を緩めていた。
ジャリッと背後で小石が擦れる音がする。
夕日を背負って川を眺めていた自分の陰にもう一つの陰が覆う。
背後に人が立っている。
背筋が凍る。
チャンネルを背後に合わせる。
知らない人であって欲しいという雨宮の願いは潰えた。
彼だ。
狂ったような動物達の嵐が渦巻く気。
ドカ、グスンッ、ゴン、グチュ、
叩き付けられる石のイメージ。
潰れて破砕される頭蓋骨の音を自分の頭の中から聴く。
雨宮は今や全身に冷や汗をかいていた。
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