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灰赤の章15
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ゴカッ!
雨宮の頭の横で大きな石が弾け転がった。
雨宮の願いは聞き届けられた。
雨宮は青年の顔を呆然と眺めている。先程までのサイレンのようなノイズは一瞬弱まって、雨宮よりも呼吸の荒い東京さん…四十九院明希がそこにいた。
「まだ、完成してない…まだ……」
立ったまま呟く。
何が完成していないというのか。
立ち上がり逃げようと思ったが、今は穏やかでも瞬時に嵐になりそうで恐ろしくて動けずにいた。
彼を刺激したくはない、それが雨宮の結論だった。
彼に集中するあまり、四十九院の心に入り込み現実が侵食されていっても雨宮は気付かない。
気が付けば雨宮は真っ白な空間にいた。
雨宮の足元に黒いシミができてジワジワと膨れ上がって行く。状況が飲み込めないままシミに近付くとそれは物凄い量の蟻だった。
蟻は物凄い勢いで雨宮に迫る。
慌てて後ずさるが水が溢れるように拡がって足場を奪っていく。真っ白な空間がオセロのように黒く変わっていく。
捕まるといった危機感が雨宮を立ち上がらせ、白い場所へ向かわせる。
走って走って走って。
目に付いた白い山を目指す。何故かはわからないが其処が最後の砦のように感じたのだ。
山の真下まで辿り着いたが、最初の足がかりになりそうな場所まで高くて手が届かない
背後に迫る蟻を感じながら絶望感を味わった。
と。
上から手が差し出される。
無我夢中でその手を握ると引き上げられた。
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