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苦色の章1
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俺の様な症状の人間には正しい生活リズムが必要らしい。
いつも現実と妄想の狭間にいて、メトロノームみたいに左右に揺れる。頭の中を占拠する力は、俺の記憶を奪う。
カチコチコチコチ……
俺は自分がわからない。
水曜日は河原に散歩に行く。
カウンセラーの女の診療の不快感を残しながら、悔しい事に自分らしきものの一片を自覚する。
怒りが自分の輪郭を僅かに露わにした。
彼女の思惑通りだ。
蝉の声が重なり合って響き、蟻が脳味噌を侵略する音に似て頭を抱える。
蟻が膨れ上がって声が響く。
…まだ、まだまだやらないと………
まだ完成してない………
蟻の声を聞くとそんな気分になる。
そして。
肉を潰す感覚。
スイカを叩き割るのに少し似ている。
スイカより硬い。でもその耐久値を過ぎ、硬い骨が砕けるとぐしゃりと柔らかい。
中は母さんが一度作った味噌汁に入っていた具、魚の白子に似ている気がする。ブリブリしてクリーミーで、グロテスク。俺は気持ち悪くて吐き出し二度と食べないと決めた。その日から食卓にその味噌汁が上がる事はなかったけど。
兎は簡単。
あいつらは鳴かない。
死ぬ瞬間まで鼻をヒクヒクするだけ。
兎も猫も頭を叩き割ると同じ。
石を振り下ろして、ドン!
目が飛び出る、ドン!
少しカタツムリに似てる。
ドンドンドンドンドンドン!
6回。
B級映画みたいなスプラッタ。
怖くはない。
ただ、好きでもない。
蟻が囁く。
…願いが届く様に…
頭を……叩き割る………
ジージージージージージー
1人歩く河原に誰かがいた。
たそがれる様に座っている。
引き寄せられる様に近付く。
自分と同じ位の男だ。
俺は自分の形を忘れつつあった。
体が綿になったみたいに軽い。河原の石が靴底で擦れる音は最低限。男の背後に近付く。
何故か。
其処に頭があったからだ。
彼の頭を叩き割るのに必要な大きさと重さの石を見繕っておく。
ジージージージージージー……
ずっしりと重い良い石を見つけた。
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