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苦色の章4
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体が崖の上に引き上げられた。すぐさま四十九院の手を振り払い雨宮は這いずりながら距離をとった。
周囲を見回す。
真っ白な四十九院の世界。
崖はさほど高くなく、平坦で体育館程度の広さがあった。
この崖の上が彼の居城なのか。
さぞ荒んだ世界が拡がっているのだろうと思ったが、予想に反し雨宮は驚いた。崖の上には小さな池がある。
その中心に十畳程度の緑の浮島があり、小さな花が咲き乱れている。島の中央には一本の広葉樹。
島を覆うように大きい。
美しい場所だった。
ここは何だ?
人の心に触れても、本音が見える程度にしか潜った事が無い。こんな深層に近い所まで潜ったのは初めてだ。
ここでダメージを受けたり死んだりしてしまったら、体に戻れるかわからない。
戻れてたとしても植物状態になるかもしれない。
心象世界は夢のように脈絡なく、次の瞬間どうなるかわからない。この美しい場所からまばたきする間に地獄の様相になる事もある。
どうやってここを抜け出すか。
人生で、こんなに緊張した事はない。
四十九院の世界では、全ての事象に於いて彼が優位になる。
ちらりと崖の下を覗き込めば崖の真下は全て黒くなっていた。蟻はこの崖を登れないようだ。
同時に逃げ場は無い。
四十九院の口が動いた。
「……眼が、虹色」
雨宮は眉を顰めた。
コイツ何を言っている?
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